Yahoo! JAPANは昨年の11月30日、デジタル教育事業を展開するキラメックスと業務提携し、有料のオンラインプログラミングスクール「Yahoo!テックアカデミー」を開設した。
「Yahoo!テックアカデミー」では、Yahoo! JAPANで新卒エンジニアの育成を行っている社員とキラメックスが共同で企画し、プログラミング未経験者がWebエンジニアとして働くために必要なスキルを習得できる実践的なカリキュラムを用意。
また、Yahoo! JAPANのエンジニアとの「1on1」によるキャリア相談や、コマースCTO(最高技術責任者)などのプロフェッショナルエンジニアによる講義などのカリキュラムを通じて、プログラミング未経験者からエンジニアへのリスキリング(学びなおし)を支援している。
そこで、同社にリスキリング支援を始めた経緯やサービスの内容、他社との差別化について、ヤフーテックアカデミー推進室 室長 佐野ひかり氏に聞いた。
なお、「Yahoo!テックアカデミー」は経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に採択された。これにより、一定の条件を満たすことで、受講料の最大70%が補助される。
ヤフーならではの教育事業の強みとは?
ITの人材不足はかなり前から指摘されていました。このタイミングでIT人材育成事業に参入した理由を教えてください。
佐野氏:昨年、社内で次にどのようなところに参入すると、より社会的な意義や社会の課題解決に貢献できるかというアイデアを募る機会がありました。ヤフーが持っている技術力やIT人材の育成ノウハウが社内でたまってきているのは事実だったので、それを基に何か事業として価値貢献することができるのではないかと思い、経営人との会話を踏まえ、教育事業という形でやってみようということで誕生しました。
ターゲットとしては、個人の転職支援がメインになるのでしょうか?
佐野氏:カリキュラム自体は、個人の転職や職種変更までを含めた学びを支援する設計になっています。個人への取り組みを行うこと自体が、結果として企業へのアプローチにつながると思っています。
すでに教育事業を行っている企業はいくつもあります。どちらかといえば後発になると思いますが、どういう部分で特徴を出していきますか?
佐野氏:われわれが事業会社である点が、一番大きいと思っています。他社のプログラミングスクールや長期で職種転換を目指すようなプログラムを提供している研修会社が多いと思いますが、われわれのようにサービスを作っている会社がノウハウを還元するという形には、独自性があると思っています。
ヤフーはこれまでインターネットを中心に事業展開してきましたが、社内でもサービスを0から100まで作ることができます。初学者に対して、学習後の立ち上がりといった観点を踏まえた設計ができているところは、ポイントだと思っています。
また、社内のエンジニアがカリキュラムに参加する形になっており、リアルで働くエンジニアと直接会話ができ、その人にコードも見てもらえたり、キャリア相談ができるところは、他の会社だとなかなかできないと思っているので、ここも一つ差別化だと思っています。
伴走型だから、エンジニア職に就くまできっちり支援
ヤフーが培ったスキルというのは、どういったものでしょうか?
佐野氏:社内にはエンジニアだけでなく、仕様書を書く企画担当から、仕様に対応する要件定義、さらにそのプログラミングなど、すべてを一気通貫でやっている点が当社の強みだと思っています。それをベースに、エンジニア目線など、システム全体を捉えた知見があると思っています。
プログラミングはJavaがベースになっていますが、Javaという言語自体は普遍的なものなので、ヤフーのオリジナリティがあるわけではありません。構成、どこをピックアップするかといったところは、われわれが社内の研修で作ってきたものをベースに行っているので、カリキュラムはより実践的なものになっています。
半年間で55万円という料金は、個人向けとしては高額で期間も長めだと思います。例えば、数万円でもう少し期間の短いカリキュラムを提供することもできたと思います。こうしたカリキュラムにした理由は何でしょうか?
佐野氏:Eラーニングとしては1講座数万円で提供することもできますが、私たちが目指しているのは、IT人材を一人でも増やすため、学び直しの結果、別の職種に変更することです。われわれがこれまでやってきたことを踏まえると、数日のプログラムで変われるものではないと思っています。しっかりとエンジニア職に就くまで支援することを考えると、4カ月が学習コースで、その後の転職支援が半年というのは、必然の期間になります。
また、伴走を支援し、専属のメンターを付けるといったところにこだわっていますので、人件費がかかります。しっかりとした伴走支援がないと、ゴールを達成できないと思っているので、現時点で価格体系を変える想定はしていません。