2025年に100周年を迎える野村證券では、資産運用のためのアプリの開発やOMO(Online Merges with Offline)の推進といったデジタル活用を進めている。そのために設立したのがデジタル・カンパニーだ。これは2019年に未来共創カンパニーとして立ち上げられ、2022年にデジタル・カンパニーとして生まれ変わったものである。
8月2日~18日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 for Leader DX FRONTLINE ビジョンから逆算する経営戦略」に、野村ホールディングス 執行役員および野村證券 常務であり、デジタル・カンパニー長 兼 営業部門マーケティング担当の池田肇氏が登壇。資産運用アプリやブロックチェーンを活用した新領域のビジネスなど、デジタル・カンパニーでの取り組みについて解説した。
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3つの基本戦略を掲げるデジタル・カンパニー
講演冒頭で池田氏は、同社のデジタル・カンパニーについて、デジタル技術を活用して金融サービスの質を向上していくことを目的に、部門横断の組織として設立したものだと述べた。証券業界の変化は大きい。昨今のデジタルサービスの普及に伴い、1株単位などの小口投資が可能になり、自動積立やリスク分散の手法も開発され、ネットの情報で知識も得られるようになっている。資産運用が身近なものになってきているが、投資しようという人が増えれば、どのくらいの資産を投資すべきか、どの証券を買うべきかといった悩みを持つ人も増えることになる。証券会社はこのような顧客に対して、「しっかりしたアドバイスをし、どんなサービスを提供するかを考えていく必要がある」と同氏は言う。
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デジタル・カンパニーのミッションとビジョン
そのために、デジタル・カンパニーでは3つの戦略を掲げている。1つ目はデジタルを中心とした金融サービスを提供しユーザー数を拡大すること、2つ目は新しい領域、新しい技術を活用して、新たなビジネスを創出すること、3つ目はこれらの実現のために、しっかりしたDX戦略を持ち、DX人材を確保することだ。また、オンラインとオフラインを融合させること、つまりOMOも重視している。幅広い顧客にサービスを提供するためには、対面や電話での対応に加えてデジタルサービスをシームレスに提供することが必要であり、質の高いデジタルサービスを提供することが資産運用の質を向上させることにつながるためだ。
資産運用のカスタマージャーニーをカバーする4つのアプリ
デジタル・カンパニーが、デジタルの金融サービスとして開発したのがスマホアプリだ。2020年から現在までに4つのアプリが提供されている。この4つによって、資産の把握・管理、情報収集、実際の取引、そして保有しているものについてのフォローという、資産運用のカスタマージャーニーを全てカバーできるようにした。デジタルIDの導入によって各サービスをシームレスにつないでおり、ユーザーの利用データを分析、管理することで、サービス改善やアップデートに活かしている。今後は、これら4つの機能を1つのアプリに統合し、ワンストップで資産運用を行えるようにしていく予定だという。
ブロックチェーンを活用した新領域のビジネス
これまでの伝統的な金融サービスに加え、新領域のビジネスとして分散型金融にも力を入れている。これはブロックチェーン技術を活用したデジタル・アセット・ビジネスで、特にトークン・ビジネスに注力している。デジタル化された金融商品の権利の取引を行えるプラットフォーム「ibet」を開発するBOOSTRYを設立したり、デジタル資産のカストディサービスを提供するKomainuへ出資したりするなど、デジタル・アセット全般に対してグループ全体で取り組みを強化。また、セキュリティトークンにも注力しており、「最大級の案件を進めている」と池田氏は聴講者に語った。今後もさまざまな権利をデジタル化するサービスを展開し、ビジネスで活用できるWeb3やブロックチェーンに関する知識も学習アプリを通して提供していく計画だ。
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セキュリティトークンの取り組み例
新たな技術の活用としては、コミュニケーションと運用パフォーマンスに導入したAIがある。AIによってサービスを進化させることは、「デジタル・カンパニーの大きなテーマ」だと池田氏は強調する。生成AIなどを活用することで、金融サービスをより有効で身近なものにできるよう模索しているほか、パイロットファンドの運用も開始した。