大型統合の真っ最中という激動の時代にファミリーマートの社長に就任し、数々の改革を推進して業績を向上させたのが、ロッテベンチャーズ・ジャパンの代表取締役会長である澤田貴司氏だ。8月2日~18日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 for Leader DX FRONTLINE ビジョンから逆算する経営戦略」に同氏が登壇。ファミリーマートの社長に就任するまでのキャリアで考えてきたことや、ファミリーマートで社長として行った改革について語った。

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現場での違和感をどう是正するかをひたすら考えた

澤田氏は冒頭、ファミリーマートの社長に就任するまでのさまざまなキャリアについて語った。最初に入社した伊藤忠商事では、イトーヨーカ堂と共同で行っていた米セブン-イレブンの買収再生プロジェクトに参加した。そこではイトーヨーカ堂の伊藤雅俊社長(当時)が自ら現場に出向き、顧客や加盟店のためになっているかを確認していたことに衝撃を受けたという。それまで担当していた利益至上主義の現場とは違い、利他的で自ら現場で汗をかく経営陣の姿を見たことに感銘を受けた澤田氏は、「伊藤忠商事こそ小売業へ参入すべき」だと当時の室伏稔社長に直訴し、すぐにこれを任された。しかし2年ほどトライしても上手くいかず、辞職したそうだ。

  • 澤田氏の経歴

ユニクロをブランドに持つファーストリテイリングでは、現場での違和感をどう是正するかをひたすら考えた結果、驚くべきスピードで出世街道を駆け上った。まず採用時に、経営者になるためには店長をやる必要があると訴え、店長候補として入社。しかし現場に行ってみると違和感を持つところが多く、それを柳井正氏にFAXで伝え続けたところ経営企画室長に抜擢された。ここでは、社員が自社ブランドの服に誇りを持っていない、デザイン事務所が点在していて合意形成が難しい、工場が乱立しているといった問題を指摘して商品本部の改革を訴えた。すると今度は商品本部長を任され、その2カ月後には役員常務、さらに1年後には副社長になった。

澤田氏はその後、企業を買収して再生するKIACON、REVAMPといった会社の創業を経て、2015年に伊藤忠商事の当時の岡藤正広社長のオファーを受け、サークル K サンクスとの統合を進めていたファミリーマートの社長に就任することになる。

全社員で改革を推進するために掲げた5つの行動指針

澤田氏は、ファミリーマートに対して入社前から問題意識を持っていたと語る。例えば、各社の出店競合に伴う飽和化、既存店の伸率鈍化、ドラッグストアなど他業種が大規模に参画してきたことなどがある。そこで同氏は、大胆な構造改革を決意した。このとき重視したのは、店舗数を増やすような量の追求ではなく質を向上させること、そして全社員で一丸となって改革をすることだった。

澤田氏は改革のために、5つの行動指針を掲げた。1つ目は“One FamilyMart”として1つの会社にまとまること、2つ目は「誰が」正しいかではなく「何が」正しいかを考えること、3つ目は各自が売上と利益を上げることで生産性を向上させること、4つ目は未来につながらないことは徹底的に排除すること、5つ目は社員の総力を結集し、徹底的に情報共有することである。