データ保護ソリューションを手掛けるArcserveは9月6日、日本法人であるArcserve Japanの職務執行者社長に公家尊裕氏が就任したとして、事業戦略説明会を東京都内のホテルで開催した。

8月に日本法人社長就任が発表された公家氏は、その経歴が特異だ。これまで約20年間複数企業のカントリーマネージャを務めてきたのだが、なんと今回が16社目となる。過去のどの企業も就任から約1~2年で買収されるなどしたため、さまざまな企業を渡り歩いてきたという。

これまでに担当してきた企業の領域を挙げると、IT機器のハードウェアやソフトウェアに始まり、工場の管理システムやビルのマネジメントシステム、セキュリティ、ブロックチェーンなど、こちらも多岐にわたる。

公家氏は、そうした自身の経験を踏まえ、自身がこれから発揮できる能力を以下のように紹介していた。

「さまざまな業界の企業に1~2年ずつ在籍したことで、各業界の知識を蓄えてティッピングポイント(臨界点)を超えて業界の特性やマーケットのトレンドを把握したうえで次の業界へと移ることができた。その15社・15業界分の経験をArcserve Japan向けにアレンジして新戦略を策定した」

  • Arcserve Japan 職務執行者社長 公家尊裕氏

    Arcserve Japan 職務執行者社長 公家尊裕氏

きめ細かな顧客プロファイルの下、事業を迅速に展開

国内事業の展開におけるキーワードは「HIGH SPEED・HIGH RESOLUTION(高速・高解像度)」だ。顧客プロファイルを細かく設定することで、各社に適切な事例やソリューションを迅速に展開できる体制を構築する。

  • キーワードは「HIGH SPEED・HIGH RESOLUTION」

    キーワードは「HIGH SPEED・HIGH RESOLUTION」

これまでの同社の販売戦略では顧客を規模に応じて中小企業と大企業に大別し、そのうち大企業はさらに業界に応じて分けて営業活動を行っていたという。「これまでのセグメントを例えるならば、"男性の公務員は全員同じ趣味を持つ"や"女性の会社員は全員が同じ行動を取る"と想定するような粗さだったと反省している」と公家氏は振り返った。

  • 従来のセグメント分け

    従来の顧客のセグメント分け

そこで新戦略では、従業員規模に応じて0~10人、10人~30人、30人~50人、50人~300人といった具合で企業を大別する。それから企業の業界に応じて細分化し、さらには製造業の中でも自動車や家電、精密機械のように、関与する領域で区別する。

加えて、同じ企業であっても、ITやOT、マーケティング、ソフトウェアなど、顧客の担当者レベルで細かくプロファイルを策定するという。その他にも、地域やDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応具合によってさらに個別化し、HIGH RESOLUTIONな(解像度が高い)顧客プロファイルを構築していく。

ここまで詳細に分けた顧客プロファイルに対して、まずはArcserve Japanとして重点的に対応したい顧客を選定してアプローチするという。その選定が効果を発揮すればさらに注力し、効果が見られなければ異なる顧客層へとアプローチ先を変更する。この試行錯誤を高速に実施する営業施策が、公家氏の掲げるHIGH SPEEDな戦略だ。

  • より詳細に設計した理想的な顧客プロファイル

    より詳細に設計した理想的な顧客プロファイル

「詳細に顧客プロファイルを策定することで、『あなたと同じようなプロファイルの企業はこのような被害を受けました』といった事例が、具体的に身近に受け入れられるようになるはず。日本の顧客は『みんなが導入しているから』といった理由で、製品の導入を決める方も多いと感じている。AIなども活用しながら個別の企業に的確に訴求できるよう改善していきたい」と公家氏は展望を語った。

Arcserveがグローバルで展開するソリューション

日本での事業戦略発表に合わせて、アメリカ本社でエグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるVitali Edrenkine(ヴィタリ・エドレンキン)氏がビデオメッセージを寄せ、グローバルでの事業展開について語った。

  • Arcserve エグゼクティブ・バイスプレジデント、マーケティング Vitali Edrenkine(ヴィタリ・エドレンキン)氏

    Arcserve エグゼクティブ・バイスプレジデント、マーケティング Vitali Edrenkine(ヴィタリ・エドレンキン)氏

現在、多くの企業はデータの活用を進めているが、それと同時に人為的なミスや機器の故障、自然災害、サイバー攻撃など、リスクも高まっている。サイバー犯罪による被害額は6月までに4億4900万ドルに達しているとの調査結果もあるそうで、その被害額は過去2番目の規模となる見込みだ。

ヴィタリ氏は「世界中の企業にとってデータの保護は重要かつ複数な課題」として、統一したデータレジリエンスを提供するための戦略を立てたと説明した。同社はマイクロソフト社の製品を中心に、SaaS(Software as a Service)モデルのソリューションを展開する。また、低コストなクラウドオプションやオファリングも展開する。

「当社は技術提携やテクノロジーパートナーネットワーク、ブランドポジショニング、差別化したチャネルを活用したセキュリティによって、他社とは一線を画した明確なポジションを築けている。顧客のソリューション導入にかかるTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)が最小となるよう、サービスを展開していく」(ヴィタリ氏)

  • 低コストでのデータ保護ソリューションを展開する

    低コストでのデータ保護ソリューションを展開する

こうした戦略のもとで展開するソリューションの一例が、包括的なデータ管理とバックアップを可能とするArcserve UDPだ。これは重複排除や暗号化、レプリケーションなどの機能を有しており、データの可用性を提供している。

また、Arcserve Appliancesは、バックアップのプロセスやツール、インフラストラクチャを一元的に管理可能なターンキー型のオールインワンソリューションである。Arcserve UDP Cloud Hybridは、Arcserve UDPまたはAppliancesと組み合わせて使用するソリューション。オンプレミスのデータを自動でクラウドへバックアップを自動で複製可能だ。

データ管理およびバックアップ向けソリューションであるArcserve OneXafeは、オンプレミスとクラウドの双方に対応し、書き換え不可能なオブジェクトによってデータを保護する。重複排除と暗号化を標準機能として提供する。

  • Arcserveが展開するソリューションの例

    Arcserveが展開するソリューションの例

ヴィタリ氏は公家氏について「これまで多数の企業でカントリーマネージャを務めており、サイバーセキュリティ市場の成長と浸透に大きく貢献してきた。当社は日本市場を重要視しており、彼を日本のカントリーマネージャとして紹介できることをうれしく思う」と評していた。