国立成育医療研究センター(NCCHD)は9月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における父親の産前・産後期うつ病のリスク要因に関する研究結果を発表した。
同成果は、NCCHD研究所 社会医学研究部の帯包エリカ研究員、大阪国際がんセンター がん対策センター 疫学統計部の田淵貴大部長補佐らの共同研究チームによるもの。詳細は、国際産科婦人科学会が刊行する産婦人科に関連する心療内科分野を扱う学術誌「Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology IPOB」に掲載された。
子どもの妊娠や出産に伴う親のうつ病といえば、母親に起こるイメージが強い。しかし、特に第一子の時は父親にも同様に大きなプレッシャーがかかるため、それがうつ病につながることもある。しかも、近年は完全な終息が見えないコロナ禍にあるため、なおさらストレスがかかる状況だ。父親の産前・産後のうつ病発症率は約10%前後といわれており、母親と同様な頻度で起こり、自身や子どもの健康に影響を与える重要な問題となっている。
しかし、父親に関する要因については明確になっていないことが多くあるという。そこで今回の研究では、父親の心理・社会的な要因を中心とし、父親がどのような属性や要因によってメンタルヘルスケアを必要とし、どのような介入を実施すべきかを理解するために、調査を行ったとする。
今回の研究は、2021年8月に行われた「コロナ禍の社会・健康関連の要因への影響を明らかにするためのインターネットコホート調査(JACSIS調査)」の中で、パートナーの妊娠・出産を経験した産前(473名)と産後(1246名)の父親を対象に行われた。
その結果、産前・産後共に「コロナへの強い不安」(どちらも約2.1倍)や、困った時に家族が助けになってくれるかなどの「家族機能の低さ」(産前約2.0倍、産後約1.9倍)に対するリスクが高いことが判明。そしてこれらの要因は、過去の研究で示された母親のうつ病リスク要因とも共通しているとのことで、今回の研究により、産前・産後期のメンタルヘルスの問題は、母親だけでなく父親にとっても重要な課題であることが示されたとする。
研究チームは今後、保健・医療従事者により適切な支援体制づくりを行うことで、父親や家族のメンタルヘルスの向上につなげたいと考えているとしている。