マネーフォワードは8月31日、法人1100人、個人事業主550人を対象に「インボイス制度に関するアンケート調査」を実施し、その結果を発表した。
インボイス制度の登録・対応準備の状況
調査によると、課税事業者のうちインボイス制度対応に必要な適格請求書発行事業者にすでに「登録している」と回答した法人は58.6%、「登録する予定」と回答したのは27.8%で、合わせて86.4%が登録する意向があることがわかった。一方で、課税事業者であっても、登録していない事業者が5.6%おり、アンケートの結果から一定数の登録しない法人もいることが読み取れる。
また、インボイス制度の適格請求書発行事業者に「登録している」「登録する予定」と回答した法人のうち、49.3%が「発行・受領共に対応できている」と回答し、「受領のみ対応できている」が25.4%、「発行のみ対応できている」が10.9%となり、これらを合わせると対応が進んでいる法人は85.6%という結果になった。その反面、11.8%は「まだ対応できていない」と回答し、対応ができていないままの状態でインボイス制度の施行を迎えてしまう法人がいることがわかったという。
インボイス制度の適格請求書発行事業者に「登録している」「登録する予定」と回答した法人のうち、インボイス制度対応について、44.6%が「大変だと思う」、42.1%が「少し大変だと思う」と回答し、合わせて86.7%の法人がインボイス制度対応を大変に感じていることが判明している。
さらに、インボイス制度対応が「大変だと思う」「少し大変だと思う」と回答した法人に対し、インボイス制度対応で大変なことを尋ねたところ、1位は「取引先や従業員への周知」、2位は「経理処理の煩雑化による対応フローの変更」、3位は「システム導入、利用中システムの対応」という結果になった。
開始直前で不安に感じていることについても尋ねたところ、1位は「担当者や従業員の制度理解の不足・周知」、2位は「システムの不具合の発生や対応遅延」、3位は「請求業務の負担拡大」と、実際の業務負荷よりも周知や制度理解への不安が多いことがわかった。
インボイス制度対応における具体的に困っている事柄については、請求業務の「煩雑な処理」「事業者への対応」「適格請求書発行事業者番号の確認」、残業増による「人件費の増加」などの自由記述の回答があったとのことだ。
インボイス制度に対応しない取引先への対応
一方、インボイス制度の適格請求書発行事業者に登録しない取引先への対応について「適格請求書発行事業者登録を働きかける」が最多の38.0%、31.7%が「取引を継続する」と回答し、15.2%が「取引金額の変更などを交渉・検討する」、3.4%が「取引中止を検討する」と答え、仕入税額控除によるコスト増に対して、取引先への具体的な対応を行うことがわかった。
加えて「免税事業者」、または適格請求書発行事業者に「登録していない」と回答した法人および個人事業主に、取引先から適格請求書発行事業者登録を働きかけられた場合の対応方針を尋ねたところ、適格請求書発行事業者の「登録を行う」と回答したのは法人で48.6%、個人事業主で28.5%、「登録を行わない」と回答したのは法人で40.6%、個人事業主で39.7%という結果になった。
個人事業主に比べて法人の方が、適格請求書発行事業者登録の要請に応じる意向が高いことがわかり、個人事業主は「わからない」の回答も31.8%と、検討できていない状況であることが考えられるという。
請求書の対応方法
請求書の受領方法については「なるべく電子で受領する(電子での発行を依頼する)」が37.8%、「すべて紙で受領する(紙での発行を依頼する)」と回答したのは5.9%に留まり、電子化する傾向が高いことがわかった。一方で「紙と電子の両方で受領する(取引先に合わせる)」と回答したのが47.9%と最多で、取引先に合わせて紙と電子両方での対応が発生することが予想されている。
請求書の発行方法について「すべて電子で発行する」が30.6%、「すべて紙で発行する」との回答は11.5%にとどまり、発行においても電子化する傾向が高いことが判明した。
「電子と紙の両方で発行する」の回答が49.3%と最多で、請求書の受領方法と同様の結果となり、請求書の受領・発行方法については取引先に合わせて柔軟に対応していくケースが多いことが推察できるとのことだ。
そのほか、紙で受領した請求書の保管方法について、スキャンや請求書受領サービスなどを通じて「電子で保管する」が73.9%、18.3%は「紙のまま保管する」と回答しており、紙のままで対応するケースも一定数残ることがわかった。
また、紙で発行した請求書の控えの保管方法について、74.9%がスキャンや請求書発行サービスなどを通じて「電子で保管する」と回答し、14.9%は「紙のまま保管する」と回答しており、受領と同じく紙のまま対応するケースも一定数残るとの見立てだ。
受領側と発行側での電子と紙の保管方法の割合について大きな割合の変化はなく、紙の請求書を電子化する傾向がある法人の割合は7割超、紙のまま対応を続ける法人も1~2割程度残ることが推察できるという。