BlackBerryは8月29日、次世代AIエンジンの大規模アップデートを発表するとともに、「製造業サイバーセキュリティ独自調査」の結果を解説する記者会見を開催した。

今回の発表会には、BlackBerry Japan執行役員社長の吉本努氏、BlackBerry Japan Cybersecurity事業本部 セールスエンジニアリング部 シニアマネージャーの池田企氏が登壇した。

本稿では、その一部始終を紹介する。

  • 左からBlackBerry Japan Cybersecurity事業本部 セールスエンジニアリング部 シニアマネージャーの池田企氏、BlackBerry Japan 執行役員社長の吉本努氏

製造部門の83%が「サポート終了しているレガシーOSを稼働」

最初に登壇した吉本氏は、「高まる製造業へのサイバー脅威~AIを活用した新しい対策~」というタイトルで、調査結果の発表を行った。

吉本氏は「国内製造業におけるクラウドベースソリューションへの移行状況」「国内製造業のOTインフラに対する現在のサイバーセキュリティ脅威」「国内製造業における古い/老朽化したハードウェアの使用状況・更新状況」について発表した。

「今回の弊社の独自調査によれば、日本国内の製造部門の83%がサポート終了しているレガシーOS(コンピュータのオペレーティングシステムのうち、OSベンダーのサポートが終了したもの)を稼働していることが判明し、サイバー攻撃の脅威にさらされていることが明らかになりました。実際、日本の調査回答者の68%が、過去1年以内にサイバー攻撃を受けた経験があると回答しており、製造業が直面する課題がより深刻化していることを示す結果も出ています」(吉本氏)

  • 調査結果を発表する吉本氏

国内回答者の82%が今年のサイバー攻撃リスクがこれまでと同様もしくは上昇すると予測していると同時に、61%は、ITインフラよりも Operational Technology(OT)のセキュリティ対策が困難だと回答しているという。

加えて、日本の製造業のIT意思決定者に懸念するサイバー攻撃について聞いたところ、悪意のあるマルウェア攻撃が78%(グローバル56%)で最多となり、フィッシング攻撃が69%(グローバル49%)と、非悪意の内部者による不正アクセスが56%(グローバル45%)と続く結果となった。

「製造業界の状況として、83%の組織がWindows 7 .x やWindows 8 .xといったサポートされていない古いOSに依存していることが問題視されています。また、高齢化が進み、人材不足の深刻化が予測される日本において、製造業が競争力を保つためには、デジタル化と自動化が生産性の向上において重要であることも示唆されています」(吉本氏)

次世代AIエンジン「Cylance AI」大規模アップデート

こうした製造業の現状などを受け、同社は次世代AIエンジン「Cylance AI」の大規模アップデートを発表した。

Cylance AIは、従来のシグネチャを用いてブラックリスト方式で対応するウイルス対策ソフトとは違い、クライアントで第七世代数理モデルエンジンが稼働し、膨大なデータでAIモデルをトレーニングして予測防御を行い、マルウェアに対する防御を提供するサービスだ。

「Cylance AIを活用した、BlackBerry Cybersecurityは、多様な製造現場に自己防衛能力を提供します。自己防衛により製造業のセキュリティ課題を解決し、最大限の稼働時間と、最小限のダウンタイムをセキュリティ面から支援します」(池田氏)

  • Cylance AIについて紹介する池田氏

今回発表された次世代版のリリースでは、AIエンジンのアップデートにより、組織における脅威予測機能が、従来のバージョンとの比較において40%強化されているという。

業界最高クラスのセキュリティと生産性の共存という同社の数十年来の理念に沿い、Cylance AIは組織の業務効率を犠牲にすることなく、サイバー攻撃への先制的対応を可能にするという。

この新しいエンジンは、反復型開発により作成されており、他のセキュリティ・ソリューションと比較して 12倍速く、20 倍少ないリソースで攻撃を阻止できるとのことだ。またアップデート版は、現在「CylanceENDPOINT」、「CylanceEDGE」、「CylanceGUARD」を使用しているすべての顧客に自動的に展開される。