富士通は8月28日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発(委託)」における第5世代移動通信(5G)基地局の無線子局(RU)において、1つのミリ波チップで最大4ビームを多重できるという技術を開発したと発表した。同社によると、同様のチップの開発は世界初とのこと。

  • 新旧技術の比較

従来はミリ波チップ1つで1ビームを生成していたため、RUが大型化し消費電力が増加する課題があった。新技術では、4つの入力信号を中間周波数(IF)帯回路によって高密度集積し、4つのIF帯入力信号に対してそれぞれ独立した振幅と位相制御を行う。

これら4つのIF帯信号を周波数変換回路によってミリ波帯へ変換すると同時に合成し、一本化した合成信号を1つのミリ波帯高出力増幅器で増幅することで、最大4ビーム多重を1つのミリ波チップで実現できるという。

今回開発したミリ波チップを使用することで、実装面積を増やさずに4ビーム多重に対応できるため、高速かつ大容量に対応した、小型で低消費電力のミリ波RUを実現できる。

同技術を実際の基地局に適用した場合、従来型のRUを用いて4ビーム多重での電波発射を実施した場合と比較すると、2分の1以下の装置サイズで10Gbps以上の高速かつ大容量通信を実現できるとのこと。また、RUチップ数を削減したことで、RU1つあたりの消費電力を従来比で30%削減できることを確認したとしている。

同社は、2023年8月から同技術を搭載した基地局装置の開発に取り組み、2024年度中に同事業で開発したビーム多重技術を適用したRUの商用展開をグローバルで開始する。その後、基地局の親局(CU/DU)製品にもビーム多重技術を適応し、2025年度よりグローバル提供を開始する。

また、通信事業者などユーザーの脱炭素化に加え、ネットワークの高度化に向けて継続して技術開発を行い、次世代通信基盤の早期展開に貢献するという。

一方NEDOは、同技術を始め、今後もポスト5Gに対応した情報通信システムの中核となる技術を開発することで、日本のポスト5G情報通信システムの開発および製造基盤の強化を目指す。