Google Cloud は8 月22日、生成 AI 関するイベント「Generative AI Summit」を開催した。基調講演では、Googleが提供する生成AIアシスタントの「Bard」をはじめとしたコンシューマー向けサービスのトレンド、Googleが開発した大規模言語モデル「PaLM」を搭載したGoogle Cloud の企業向け生成 AIサービスが紹介された。

基調講演には、Google Cloud上級執行役員 カスタマー エンジニアリング担当の小池裕幸氏、Google検索担当 ゼネラルマネージャーの村上臣氏、Google Cloud統括技術本部長(アナリティクス / ML、データベース)の寳野雄太氏らが登壇した。

本稿では、その一部始終を紹介する。

Googleがたどって来た「AI」への取り組み

最初に登壇した小池 裕幸氏は「Googleのミッション」について説明した。

「Googleのミッションは、『世界中の情報を整理し 世界中の人がアクセスできて 使えるようにすること』と設定されています。ですから、一部の国の人や一部の非常に情報リテラシーが高い方だけがアクセスするのではなくて、どんな方でも情報を得ることができるということを目指して活動しております」

  • Googleのミッションを語るGoogle Cloud上級執行役員 カスタマー エンジニアリング担当の小池裕幸氏

今回のイベントのテーマとなっている「AI」に対しても、「誰にとっても役立つAIを実現する」という想いを持って、活動を進めてきたという。

最初は2016年にAIは可能性を持ったテクノロジーであるということに目を付け、「AI First」という考えを打ち出した。続いて、コンピューティングは机の上にあるコンピュータからモバイルフォンへ、そしてタブレットなどへ広がり、さらに腕時計や自動車、バーチャルリアリティなどへ広がり続けており、同社はAIファーストの時代へ移ると予測していたという。

そして、翌年の2017年に始まったのが「Transformerプロジェクト」だ。このプロジェクトは、画期的な発明であると言われているディープラーニングのソリューションで、多くの大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)の発展の元となったものだ。

その後もAIの発展を進めたGoogleは、2023年5月に「大胆かつ責任あるAIの取り組み」を発表した。これはGoogle I/O 2023(開発者向けのGoogleのイベント)内で発言されたものだという。

Generative AIを提供する際の4つの基本方針

続いて登壇した村上氏は、Generative AIのユースケースとして「Google検索がどのようなアプローチでGenAIを実装しているのか」を紹介した。

「われわれはGenerative AIをコンシューマーに提供するにあたって、『全ての人が便利に使用できる』形で実装していきたいと考えています。そのために4つの基本方針を定めています」(村上氏)

  • Generative AI提供のための4つの基本方針について語るGoogle検索担当 ゼネラルマネージャーの村上臣氏

その基本方針とは、以下の4つだ。

・知識や学習の進歩があること
・創造性と生産性の向上があること
・業界全体のイノベーションに寄与すること
・責任のあるAIのアプローチ

4つ目に挙げられた「責任のあるAIのアプローチ」という内容は、前述した「大胆かつ責任あるAIの取り組み」から来ているものだという。

新しいテクノロジーには、メリットだけでなくデメリットもあるということを理解しつつ、慎重でありながら大胆に実装し、早く顧客からフィードバックを得る、というループを作ることで、業界全体の発展につなげていきたい考えだ。

そんなAIに先進的に取り組むGoogleだが、Google I/O 2023では、「Search Generative Experience」という生成AIを活用した新しい検索体験を得ることができる機能をリリースした。これは、AIが生成する回答を検索結果のトップに掲載する機能で、日本ではまだ対応していないが米国のGoogle Labsで実験中だという。

「今までの検索は、さまざまな情報を行ったり来たりしながら、少しずつ情報を集めていくことが多いと思いますが、『Search Generative Experience』では、それらの情報をGenerative AIがまとめ、サマリーとして表示してくれます。もちろん、このサマリーの中に元の出典なども掲載されていますので、そこから詳しく調べることも可能です」(村上氏)

この機能により、ユーザーはよりスマートに検索が可能になりつつも、既存のエゴシステムは維持しつつ、トラフィックはその先に送ることができるという。