読者の皆さんは「工場見学」というものに行ったことがあるだろうか。

小学生や中学生の時に授業の一環で行った人もいれば、大人になってから興味のある分野の工場見学に行ってみた人もいるだろう。中にはメーカー勤務で日々、工場の中で働いている人もいるかもしれない。

筆者の初めての工場見学の思い出は、小学生の頃に父と行った自動車メーカーの車体組立工場だ。当時、小学生だった筆者には見学した全ての技術が魔法のように刺激的で、全ての工程で感嘆の声を上げていたことを今でも覚えている。

そんな思い出に残る工場見学だが、今は大きな進化を遂げていることをご存知だろうか。新型コロナウイルスの流行によって工場内への立ち入りが難しくなったことや、ITツールの普及によって、デジタル技術を活用して、オンラインや工場以外の場所でも工場見学ができる仕組みを提供する企業が増えているのだ。

しかし、現地での工場見学に大きな感動を与えてもらった筆者は、オンラインでの工場見学よりもリアルで行われている工場見学の方が良いのではないかという固定観念から抜け出せないでいた。

そんな時に筆者の元に届いたのが、サントリーのデジタル技術を活用したリアルの工場ではない場所での工場見学「ファクトリー・トレック!」の案内だ。これは実際に体験して、その内容を確かめてみるしかない。

はたして、デジタル技術を活用した工場見学と実際の工場へ行って見学できる工場見学は、どのような違いがあるのだろうか。今回は、「ファクトリー・トレック!」と「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」の現地見学を体験した筆者の経験から、その差異をお届けする。

現地での工場見学 -「ザ・プレミアム・モルツ」の製造過程と歴史を学ぶ

「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」は、東京都府中市に居を構える1963年に開設されたサントリー初のビール工場だ。

  • 「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」

エントランスに到着すると、大きな「ザ・プレミアム・モルツ」のロゴが出迎えてくれる。そして中に入ると、「ザ・プレミアム・モルツ」の世界観を感じることができる展示やサントリーのビール事業の歴史を学ぶことができる仕掛けが用意されている。

  • 工場のエントランス

工場見学がスタートすると、「素材選び」「仕込」「発酵」「貯酒」「ろ過」「パッケージ」といった製造工程を順に見ていくことができる。

初めに訪れる素材選びのブースでは、実際に「ザ・プレミアム・モルツ」に使っている麦芽やホップを体感しながら、同社のこだわりを知ることができる。また、ビールの骨格ともいえる麦汁が出来上がっていく仕込工程では、実際の設備を間近で見て、仕込現場の迫力や熱気を体感できるようになっている。

  • 「ザ・プレミアム・モルツ」の原料である「ダイヤモンド麦芽」が採れる大麦

  • 近くで仕込み釜が見られるのはリアルの工場見学ならではだ

その後は、発酵や貯酒・ろ過・パッケージングといった「ザ・プレミアム・モルツ」が出荷されるまでの製造工程を順に見学していく流れになっている。その後はサントリーの環境活動を学べるパートも用意されており、ビールの製造だけでなくサントリーの活動全体に詳しくなれること請け合いだ。

  • サントリーの環境活動についても学べる

また、工場見学の最後には試飲会が用意されており、今まで製造工程で見てきた「ザ・プレミアム・モルツ」を楽しむことができる。

  • 「ザ・プレミアム・モルツ」を試飲することができる

工場見学の最後には、サントリーならではのお土産コーナーも設置されているため、見学の思い出を「体験」だけでなく「もの」として持ち帰ることができる。

VRでの工場見学 - 味覚と体験で工場を楽しむ

ビール工場での楽しかった思い出も冷めやらぬ内に、筆者は「ファクトリー・トレック!」の体験会にも参加。

「ファクトリー・トレック!」は、「知って飲んだら、なお格別。」というキャッチフレーズの下で始まった、デジタル技術を活用してVRで工場見学を楽しむというコンテンツだ。

こちらは、前述の工場見学とは異なり、飲食店にて行われる。筆者が参加した体験会は、サントリー田町オフィスの「CAFE HARBOR」で行われた。

筆者は、現地まで赴いた工場見学との比較のために、ビールの製造工程を見学できる「〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野コース」を体験したが、他にもウイスキーが楽しめる「白州蒸溜所コース」と「山崎蒸溜所コース」が用意されている。

「CAFE HARBOR」に着いて、席に案内されると、すでにテーブルの上には今回の見学で使用するVRゴーグルが鎮座していた。

  • 体験セットが用意されている 

この時点でリアルの工場見学とは雰囲気の違う要素だが、もう1つ大きく異なる要素がある。それは、イベントが始まってすぐにウエルカムドリンクとして、サーバーから注ぎたての「ザ・プレミアム・モルツ」が提供されるという点だ。

  • 注ぎたてのウエルカムドリンクが用意される

工場見学の際もビールの試飲は楽しめたのだが、工場内を見て回るパートと試飲をするパートで、違う時間区分が設けられていたため、見学をしながらビールを楽しめるというのは新鮮な試みだ。

また進行を担当しているのは、普段実際に工場で見学者の案内をしているガイドの方のため、リアルの工場で見学しているのと変わらないクオリティで工場見学を楽しむことができる。

  • 進行の様子

いよいよVRゴーグルを掛けると、目の前にはビールづくりの現場が広がっている。ガイドのアナウンスに従って、「仕込」「発酵」「貯酒」「官能検査」といった工程をじっくりと見学することができる。

  • VRゴーグルで見られる風景のイメージ

この過程の見学はリアルでの工場見学と同様にビールの素となる麦汁が仕込まれているタンクの中を覗き込むことができるなど「ザ・プレミアム・モルツ」の製造工程を詳しく知ることができる上に、リアルでの工場見学では見ることができない設備も見られるといったバーチャルならではの特徴も設けられている。

その意味では「官能検査」の項目もバーチャルのみの項目となっている。匂いに敏感にならなくてはいけないパートのため、官能検査を行う部屋にはなかなか入ることができないのだ。

また、この「ファクトリー・トレック!」最大の特徴が、VRでの工場見学を終えた後に用意されている。

「ザ・プレミアム・モルツ」と「同〈ジャパニーズエール〉香るエール」の試飲とともに、それぞれのビールに合う食事が用意されているのだ。

  • 最高のおつまみとともに試飲を楽しめる

最高品質の飲用体験と飲食店おすすめの食事によって、この工場見学の思い出をより特別なものに変えることができるサントリーならではのイベントだ。

今回、「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」について、2つの方法で工場見学を体験した。実際に工場に行かなくては体験できないことはもちろん、行かないからこそ特別な思い出になる工場見学もあるということがよく分かる取材となった。

皆さんも企業の想いとこだわりが感じられる工場見学へ是非出掛けてみてはいかがだろうか。