ITコンサルティングやSI、サービス・製品販売事業などを手がけるTDCソフトは7月4日、同社内における新組織「エンタープライズアジャイル事業本部」の新設に伴う事業戦略記者発表会を都内で開催した。

DXを成功に導くエンタープライズアジャイル

TDCソフト 取締役執行役員の北川和義氏はエンタープライズアジャイル事業本部を立ち上げた背景として「昨年まではビジネスイノベーション本部で内包されていたが、昨年度における事業の進捗推移を鑑みた結果、エンタープライズアジャイル事業を打ち出し、注力していく方針を昨秋から検討を進めていた。新組織はコンサルタントとトレーナーが中心ではあるものの、後方支援は他の事業本部が行い、多くのお客さまにアピールして実績を作っていく」と述べた。

  • TDCソフト 取締役執行役員の北川和義氏

    TDCソフト 取締役執行役員の北川和義氏

また、TDCソフト エンタープライズアジャイル事業本部 本部長/執行役員の上條英樹氏は「DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功に導く手段としてエンタープライズアジャイルを推し進めていく」と話す。

  • TDCソフト エンタープライズアジャイル事業本部 本部長/執行役員の上條英樹氏

    TDCソフト エンタープライズアジャイル事業本部 本部長/執行役員の上條英樹氏

同氏によると、日本企業におけるDXの現状としてゴールを定めずに形だけで取り組もうとしており、従来のプロセスを変えずに小手先のITで変えようとしているほか、従来型のマネジメントスタイルのままで進めようとし、変革の結果を外部に要求していることなどを挙げている。

上條氏は「DXはITの活用と考えられがちだが、他社との差別化を反映した企業戦略の策定やポートフォリオレベルのビジョン策定と認識の共有、経営とビジネス、ITが融合して初めてDXと言える。また、変革を推進するのは人であり、これまでの育成方法で変革が起きなかったことに目を向け、従来とは異なる内部の変革リーダー育成、人材キャリ形成などトレーニング、ワークショップを繰り返すことを通じて、文化として根付き、組織と人材がベクトルを合わせることにつながる。そこでDXの推進に必須となるものがアジャイルだ」と説明した。

  • DXの推進にはアジャイルが必須だという

    DXの推進にはアジャイルが必須だという

日本企業のビジネスアジリティ獲得を「SAFe」で支援

エンタープライズアジャイルの定義は、(1)大企業で小規模なアジャイルを導入する、(2)大規模プロジェクトをアジャイルで運営する、(3)組織や企業そのものをアジャイルに運営するの3つをポイントとしている。

  • エンタープライズアジャイルの定義

    エンタープライズアジャイルの定義

同社では2015年にアジャイルの取り組みを開始しており、2019年に大規模組織むけアジャイルフレームワーク「SAFe」(Scaled Agile Framework)を提供するScaled Agileのブロンズパートナー、2020年にはゴールドパートナーをそれぞれ締結。エンタープライズアジャイル事業本部における戦略としては同社のエンタープライズアジャイル導入メソッドを活用したビジネス拡大を図る。

上條氏は「日本企業のビジネスアジリティ向上のために欧米の成功事例を活用して、エンタープライズアジャイル導入の障壁を取り除き、お客さま自ら時代の変化に適応できる組織づくりを促進させる。当社のコンサルタントによるSAFeをベースにコンサルティングとトレーニングを中心に再定義し、新たに展開する。当社の独自のメソッドを活用した組織変革を支援する」と説く。

エンタープライズアジャイル導入メソッドは「認知・インプットフェーズ」「準備フェーズ」「実践フェーズ」を段階的に進めていく。認知・インプットフェーズではビジネスアジリティアセスメントを行い、組織・チームの状態を可視化し、分析結果にもとづいて適用するアクションのスケジュール・アクションを決定する。

準備フェーズでは組織全体への適用、チームの適用ごとに自組織内で実践できるようになるためのビジョン・目標の定義、プロセスの見直し、チーム、人材の実践トレーニングを行う。実践フェーズでは、組織・チームで自らビジネスアジリティを獲得するための活動を実践し、計画、測定、振り返りを繰り返すことで、時代の変化に柔軟に適応できる組織を作り上げる。

  • エンタープライズアジャイル導入メソッドの各フェーズの概要

    エンタープライズアジャイル導入メソッドの各フェーズの概要

上條氏は「お客さまのビジネスアジリティの獲得に向けて、SAFeを軸に経営と現場からの両面に対応するアプローチを行う。日本企業に向けた独自のアセットを用いた理解・実践につながるコンテンツを提供し、1チームでの実践から組織全体での実践をサポートする」と力を込める。

提供サービスメニューは「コンサルティングサービス」「SAFeトレーニングサービス」「コーチングサービス」「アジャイルチーム提供」「サポートツール提供」「サポートサービス」の6つとなる。主な対象企業・対象者は中堅企業、大手企業を想定しているが、スタートアップをはじめとした中小企業もサポートする。

  • 提供サービスメニューの概要

    提供サービスメニューの概要

今後、同社では体制を整える方針としており、2026年までにSPC(SAFe Practice Consultant)人材を50人、トレーニングクラス開催の累計目標が150、SAFeトレーニング受講者の累計目標が3000人、コンサルティングサービスを含めた売上目標は10億円を計画している。

  • 体制と目標

    体制と目標