パナソニック ホールディングス(HD)傘下で、法人向けシステムを手掛けるパナソニック コネクトは7月5日、ネットワークに接続できない設備や機器も含めてクラウドで一元管理できる新サービス「Assetier(アセッティア)」の提供を開始すると発表した。

同サービスは、ネットワークにつながるIT資産だけでなく、ネットワークにつながらない什器や機器、小さな備品などを含めたさまざまな有形資産の情報をQRコードを用いて取得し、クラウド上で一元管理できる。稼働状況といった関連データも管理でき、それらを可視化して投資計画に活用することもできる。ラベル発行・貼付や棚卸といった導入から運用管理に伴う業務を代行するオプションサービスも提供する。まずは全国展開する小売や飲食、物流業界を中心にサービスの提供を進めていく。

  • 「Assetier(アセッティア)」サービス概要

    「Assetier(アセッティア)」サービス概要

企業が保有する資産には、PCなどのIT機器だけではなく什器や備品、機械設備や車両など、業界によりさまざまな種類の資産が膨大に存在している。IT資産だけではなく、現場のあらゆる資産の数量や所在、状態を正確に管理していないと、紛失・盗難・私物化・セキュリティ事故の発生や、突発的な修理やリプレースによる予期せぬ支出につながりかねない。

しかし、多くの企業では台帳や表計算ソフトなどで資産管理をしていると言われている。特に飲食・流通業界のように日本全国に店舗を構える業態では、店舗ごとに管理台帳や管理方法が異なり一元管理ができていない、台帳と現物の差異が発生している、購入・移動・廃棄の履歴管理ができていない、人力対応のため棚卸に時間がかかる上に間違いが発生しやすい、といった課題を抱えているとのこと。

  • 資産管理業務における現場の課題

    資産管理業務における現場の課題

5日に開催された記者会見で、「一般的に、全国に100店舗チェーン展開をしている企業の場合、1店舗あたり約200アイテムあり、すべての店舗の資産を合計した総数は約2万アイテムある。例えばコンビニでは、ネットワークにつながるPOS端末もあれば、ネットワークにはつながらないフライヤーやコーヒーメーカーなどがある。多数の拠点にあるさまざまな資産をいかに正確に効率的に一元管理できるかが課題だ」と、サービス&ソフトウェアプラットフォーム本部 サービスマーケティング部 サービス開発2課 マネージャーの中川大輔氏は説明した。

  • パナソニック コネクト サービス&ソフトウェアプラットフォーム本部 サービスマーケティング部 サービス開発2課 マネージャー 中川大輔氏

    パナソニック コネクト サービス&ソフトウェアプラットフォーム本部 サービスマーケティング部 サービス開発2課 マネージャー 中川大輔氏

Assetierは、固定資産、IT資産、リース・レンタル資産、少額・簿外資産、在庫資産などあらゆる有形資産をクラウドで一元管理できるサービス。QRコードをスキャンして資産情報を読み取み、棚卸作業を効率化する。また、目視確認や個人判断によるミスも削減できる点が特徴だ。手持ちのスマートフォンやタブレットでもスキャンができるため、専用端末を新たに用意する手間やコストも省けるとしている。

「電子部品や計測器など、約2万アイテムの棚卸しを年1回実施している例もあり、その棚卸しの完了までに約3カ月かかっている。紙の台帳を元に人が目視で確認するため間違いも多く、その間違いの確認のための時間も短くはない。QRコードをスキャンするだけの簡単な操作で、棚卸しに要する時間を約3分の1程度に削減できる」と、中川氏は説明した。

  • QRコードを用いてさまざまな設備・機器の資産情報の取得が可能

    QRコードを用いてさまざまな設備・機器の資産情報の取得が可能

また同サービスは、資産名称や数量などの基本情報に加え、リース・レンタル品であるかどうかや、修理や点検の履歴、保守契約内容といった詳細情報もあわせて管理することができる。さらに、さまざまな条件で資産を検索できる機能や、リースやレンタルの返却期限が近い場合などに担当者へ通知する機能もある。

  • メインメニューイメージ(左:PC画面、右:スマートフォン画面)

    メインメニューイメージ(左:PC画面、右:スマートフォン画面)

  • 検索結果画面イメージ(左:PC画面、右:スマートフォン画面)

    検索結果画面イメージ(左:PC画面、右:スマートフォン画面)

「変化する資産のステータスを正確に管理していなければ、機会の損失や無駄な購入などにつながりかねない。どこに何がどれだけあるかということを正確に把握することはとても重要。Assetierでは、ステータスが変化したタイミングでその資産のQRコードをスキャンし、状態に応じた項目に変更するだけで済む」(中川氏)

  • さまざまな情報を正確に集約・管理できる

    さまざまな情報を正確に集約・管理できる

またオプションとして、ユーザーの目的に沿って資産情報を多面的に可視化できるダッシュボード機能も備わっている。例えば、資産区分ごとの投資計画や拠点ごとの保有割合などのグラフ表示など、情報の管理だけにとどまらず経営に役立つデータとしての活用が可能だ。中川氏は「リース・レンタル機器の満了時期とその台数、拠点別の保有数比較、購入先別費用比較など、経営に生かせるデータとして活用することができる」と補足した。

  • 操作画面イメージ(ダッシュボード画面)

    操作画面イメージ(ダッシュボード画面)

同じくオプションとして、資産情報登録時のハードウェアの調達やラベル発行・貼付の代行などのBPOサービスも提供する。全国63拠点で約1600名のスタッフが、導入から運用までのすべてのフェーズで業務負担の軽減を支援する。「現場に数万点もの資産のラベルを発行し、それらをすべての資産に貼り付け、データ登録を行い、定期的に棚卸しを実施するというのはとても大変な作業だ。顧客が本業に注力できるように、われわれがバックヤード業務を代わりに行う」(中川氏)

  • BPOサービスの提供範囲

    画像:BPOサービスの提供範囲

なお同サービスは、規模や用途に合わせた3つのプランを用意。初期導入費は75万円からとなっている。

  • 規模や用途に合わせた3つの提供プラン一覧

    規模や用途に合わせた3つの提供プラン一覧

パナソニック コネクトは今後、顔認証を活用した資産の持出・返却時の本人認証や、画像解析技術を活用した資産の移動や持ち去り検知など、同社の既存サービスとの掛け合わせによる提供価値の拡大を予定しているとのことだ。