あらゆる分野で進むDX。地方自治体ももちろん、例外ではない。定住人口の減少や高齢化など、さまざまな課題を抱えながらも、新しい街の在り方を模索するのが、長崎県だ。DXを推進することで、県全体の活性化を目指す同県では、ビジネスチャットツール「LINE WORKS」を提供するワークスモバイルジャパンと連携協定を締結し、県庁発信でデジタル化の取り組みを続けている。

今回は、長崎県 企画部 政策監(デジタル戦略担当)/産業労働部 政策監(新産業振興担当)の三上建治氏に、同氏が考えるDXの在り方と長崎県の取り組みについて、お話を伺った。

  • 長崎県 企画部 政策監(デジタル戦略担当)/産業労働部 政策監(新産業振興担当)の三上建治氏

VUCA時代に対応できる組織とは

ロボットの高度化やメタバース、ChatGPTの登場など、ここ数年のテクノロジーの進化は我々の想像を超えた速度で進んでいる。同時に世界では、新型コロナウイルスの流行に伴うパンデミックや、ロシアのウクライナ侵攻など、予測不可能な出来事ばかりが起きているのが実情だ。三上氏は「このようなVUCA時代に、組織が対応できるようにする動きがDX」だと説明する。

かつてはピラミッド型の組織が一般的で、過去のケーススタディを基にした判断が有効だった。しかし現在は、不測の事態に対応できる個人、組織が求められている。そのため、組織形態としては、「情報共有とアクションがスピーディーに行える『フラット型』になるべき」だと三上氏は言う。フラット型の組織であれば、目標が明確になり、状況が速やかに分かる。さらに、「組織の中で同じ意識を持った人をたくさんつくることが可能」(三上氏)となる。結果として、ピラミッドの頂点に立つリーダーの指示や判断を待つことなく、素早いアクションを起こすことができるというわけだ。このような組織を実現するため、長崎県 企画部は2022年5月、ワークスモバイルジャパンと連携協定を締結、庁内外でのLINE WORKS活用を開始した。

なぜLINE WORKSだったのか

ではなぜ、LINE WORKSだったのだろうか。三上氏はその理由を「まさに情報共有とスピードという理想を実現できると考えたから」だと明かす。LINE WORKSは“ビジネス版LINE”とも言われるチャットツールで、LINEと同じような使い勝手で複数名ともコミュニケーションをとることができる。ただし、LINEは個人が自身の携帯電話番号に紐付けてアカウントを立ち上げるのに対し、LINE WORKSでは導入企業の管理者がドメインを取り、利用者のアカウントを発行していく。これにより、全体の把握・管理を可能にしているわけだ。

また、LINE WORKSを庁外でも活用することを考えたとき、デジタルにあまりなじみのない小規模企業や高齢者などでも扱いやすいツールの方が、DX推進の敷居が下がるのではないかという点も、選定理由の1つだと言う。実際、長崎県ではLINE WORKSを庁内での連絡用だけでなく、庁外とのコミュニケーションにも活用している。

その1つがオンラインコミュニティ「長崎友輪家(ながさきゆーりんちー)」である。定住人口の減少抑制や交流人口の増加促進を狙ったもので、県庁職員や長崎県在住者に加え、出身者、長崎が好きな人など、長崎に関係のある人たち約350名が参加している。このコミュニティのやり取りは、LINE WORKS上に作成したグループ内で行われており、「長崎に行くのですが、今どんな見どころがありますか」「東京で長崎友輪家会を開催します」といったやり取りが繰り広げられているという。

また、三上氏が在籍する企画部が主導するプロジェクト「NEXT長崎ミーティング」の連絡ツールも、LINE WORKSだ。このプロジェクトは若者との意見交換の場であり、主にプロジェクトのメンバーに向け、LINE WORKS上に作成したグループでミーティングの開催連絡などを行っている。