ルクセンブルクに本社を構え、エッジソリューションをグローバルで提供するGcoreは6月20日、日本市場の参入に関する記者発表会を在日ルクセンブルク大公国大使館にて開催した。本稿では、その一部始終を紹介する。

会見では、ルクセンブルク本社からHead of Global Allianceのトーマシュ・ジェンバ氏が来日し、経営戦略ならびに製品の特徴などを紹介し、日本法人のカントリーマネージャーに就任した磯村広紀氏が国内戦略について説明した。

  • 左から、Gcore Head of Global Allianceのトーマシュ・ジェンバ氏、Gcore日本法人カントリーマネージャー磯村氏

アジアで28拠点を展開、世界140カ所以上のPOPを提供 (

Gcoreはエッジクラウド、エッジネットワーク、エッジセキュリティ、そしてエッジAIサービスを、世界6大陸140カ所以上のPOP (Point of Presence)を基盤として提供している。

2014年にWargaming社から分離独立し、ゲーム業界に特化する形で設立。現在はアジア、アフリカ、西欧・東欧、中南米でのインフラ強化やグラフコア社との提携により、欧州を拠点としたAIターンキーソリューションの提供を開始するなど、さまざまな事業を幅広く展開している。

日本国内でもすでに、「東京(アット東京、エクイニクス)」と「大阪(エクイニクス)」にサービス拠点を構えており、アジアでは「ソウル(韓国)」「ダバオ(フィリピン)」「マカティ(フィリピン)」「香港(中国)」「ハノイ(ベトナム)」にサービス拠点を持っている。

  • Gcoreのグローバル&リージョナル拠点

本社を置くヨーロッパで25拠点であるのに対しは、アジアは28拠点を展開していることからもアジア市場への注力の様子が分かる。そして、今回の日本市場への本格参入を契機として、成長するクラウドインフラのニーズに対してサービスを展開していく方針だという。

AI開発と自動化を単一のプラットフォームで行える「Edge AI」

Gcoreは次世代クラウド、ネットワーク、AI、セキュリティのソリューションを提供するグローバルEdge-as-a-Serviceプラットフォームを提供している。各ソリューションのラインアップは以下の通りだ。

・Edge Cloud : VM、Bare metalインスタンス、コンテイナー、ハイブリッドクラウド
・Edge Network : CDN、Streaming、DNSホスティング、エッジセキュリティ
・Edge Security : DDoS攻撃防御、WAF、Botプロテクション、APIセキュリティ
・Edge AI : CPU、GPU、IPU、ハイブリッドクラウド

その中でも「Edge AI」は、AI開発から展開、フルサイクルにおける協業ポイントモデル。「準備」→「構築」→「学習」→「推論/提供」という4ステップで、AI開発と自動化を単一のプラットフォームで行うことが可能。

「弊社は、強力な独自の強みを6つ持っています。1つ目は、『データ主権を可能にするヨーロピアン文化』、2つ目は『新興国を含むグローバルなプレゼンス』です」(ジェンバ氏)

  • 自社の強みを説明するジェンバ氏

残りの4つの強みは、「APIを含む完全自動化プラットフォーム」「基本VMからAIを活用したソリューションまで幅広い製品ポートフォリオ」「優れたカスタマイズ性と製品の柔軟性」「競争力のある価格と24時間365日のプレミアムサポート」だという。

「近年、国内でも動画視聴やデータトランスファーなど、大量のデータが日々やり取りされています。また、さまざまなAIツールがアプリケーション化され、多くの人がそのメリットを享受できるようになりました。しかし、AIによる高度な処理やデータ解析には、データ通信と莫大なデータのやり取り、処理、解析が安全に行われることが求められています。そのような背景を受けて、包括的なエッジサービス基盤への需要が飛躍的に拡大しているのは間違いありません。Gcoreの進出により、日本市場におけるエッジサービスの提供体制が一層強化され、高速で信頼性の高いソリューションの提供が可能となります」(ジェンバ氏)

日本ではゲーム業界などを中心に知名度の拡大を

続いてのセッションでは、磯村氏が登壇し、日本市場参入における「国内戦略」を語った。

「販売体制については、プロダクトカットでのパートナーシップモデルを採用する予定です。また収益共有型、ホワイトラベル型(他社メーカーで製造されたものを自社ブランドとして販売するビジネス手法)の提携を積極的に展開していきます。加えて、営業要員の増強とハイタッチ営業の強化も取り組んでいきたい内容です」(磯村氏)

  • 国内での戦略を語る磯村氏

主要なターゲットとインダストリーについては、Gcore設立当社からサービスを展開しているゲーム業界をはじめ、エンターテイメント業界、Eコマース業界、製造業、小売業界を軸に展開していく予定だという。

そしてこれらに加えて、SaaS事業会社、国内クラウド事業者、通信事業者などにも展開していきたい考えだ。

2023年10月には、「NVIDIA H100 GPU」を国内データセンターに整備することを目指しており、それまでに国内での知名度をアップさせるべく、ナレッジ情報、導入サポート情報などを含むWebコンテンツの拡充と日本語サポート要員の設置を進めていくという。

「弊社はまだまだ日本国内での知名度が低い企業です。まず年内に30社程度の企業に導入いただき、翌年にはその倍に、というように企業の知名度を高めていきたいと考えております」(磯村氏)