NTTデータは6月16日、記者会見を開き、テクノロジーを活用した災害対策と同社の取り組みについて説明を行った。

NTTデータは、中期経営計画において「フォーサイト(洞察力)起点のコンサルティング力の強化」を戦略の一つとして掲げており、そのコンサルティング力強化の先行テーマとして、 「防災・レジリエンス」に注力している。

同社は、住民の避難行動や生活回復を支える仕組みを提供することを目指し、かねてより災害対策業務を支援するソリューション「D-Resilio」を提供している。これまで、自治体や中央府省、金融機関、医療機関、民間企業、インフラ企業など、災害対応に取り組む、全国各地のさまざまな業界に各種システムやサービスを導入してきた。

  • 「D-Resilio」導入実績

    「D-Resilio」導入実績

災害現場では、膨大な量のハザード情報や被害情報に対し、限られた現場リソースで集約・確認・判断などの対応を迫られる。アナログ対応もまだ多く残る現場の実態に対して、NTTデータはデジタルの力でプロアクティブな災害対応をサポートし、対応負荷を軽減することを目指している。

  • 災害時のタイムライン(例:自治体、風水害対応)

    災害時のタイムライン(例:自治体、風水害対応)

NTTデータ 第一公共事業本部 モビリティ&レジリエンス事業部 統括部長の中村秀之氏は、「自治体や企業、個人などすべてのステークホルダーの災害対応力を向上するには、組織の垣根を超えて『つながる』こと、集まる情報の利活用効果が最大化できるよう『つかう』こと、変化する社会に適応していくために『いかす』ことが必要だ」と説明した。

  • NTTデータ 第一公共事業本部 モビリティ&レジリエンス事業部 統括部長の中村秀之氏

    NTTデータ 第一公共事業本部 モビリティ&レジリエンス事業部 統括部長の中村秀之氏

  • 災害対応力向上のキーワード

    災害対応力向上のキーワード

そこで同社は、防災情報の集約と連携を実現する「D-Resilio 連携基盤」を6月末日より提供開始する。同プラットフォームは、行政や企業の効率的な防災情報収集を実現し、先回りした災害対応の検討・判断を支援する。

  • D-Resilio連携基盤 概要

    D-Resilio連携基盤 概要

避難所情報やSNS情報など、防災業務に有用なコンテンツを提供しているベンチャー企業をはじめとしたさまざまな企業と連携し、豊富なコンテンツのラインアップを実現しているとのこと。

  • さまざまな企業とのコラボレーションを実現

    さまざまな企業とのコラボレーションを実現

また、災害の予防、事前対策のフェーズから初動対応、応急対応、復旧復興対応のさまざまな場面で有効な情報を一元的に集約し、これまで点在していたハザードや被災、災害対応情報を連携基盤に集約させることで行政や企業の情報収集の負荷を低減する。行政機関だけでなく、民間企業など災害対応の当事者となるさまざまな人が利用できる仕組みだ。

  • 豊富なデータを活用し幅広い災害対応に

    豊富なデータを活用し幅広い災害対応に

さらに、集約した情報を利用企業や自治体の状況に応じて最適なアプリケーションで利用できるよう、各種情報を重ね合わせて地図上に表示するWeb Viewer「D-Resilio Viewer」と、APIでの利用モデルの2種類を用意。なお、D-Resilio Viewerは、2024年3月まで無料で利用可能なトライアルキャンペーンを展開する。

「これまで点在していた情報を手間なく地図上に可視化でき、現場のリアルな情報をいち早く把握することができる」(中村氏)

  • 「D-Resilio Viewer」サービス概要

    「D-Resilio Viewer」サービス概要

また同プラットフォームは、「マイナンバーカードなどを基にしたパーソナル情報や位置情報を使ってリスク情報を『我がゴト化』することで、一人ひとりの避難行動を変化させることができる」(中村氏)という。使い慣れたアプリで、各種防災サービスとリスク情報の配信をセットで受けられることにより、避難時の不安や迷いが解消されることが期待されるとのことだ。

近年、時間雨量50ミリメートルを上回る短時間降雨の発生件数が増加するなど、災害が頻発するとともにその被害が激甚になっている。また、豪雨を引き金に発生する河川氾濫、土砂崩れのような複合災害も発生しており、被害はより広範囲に及んでいるとのこと。

災害の脅威が強大化する中、自治体職員の減少などによる災害対応体制の脆弱化が懸念され、一人ひとりが率先して行動する「自助」への期待が高まっている。

  • 災害の激甚化・頻発化と複合災害の発生 出典:国土交通省

    災害の激甚化・頻発化と複合災害の発生 出典:国土交通省

中村氏は、「デジタルの力で災害の脅威に立ち向かうハイレジリエント社会の実現を目指す」と意気込みを述べた。