日本電信電話(以下、NTT)は6月14日、WITH ALSおよびDentsu Lab Tokyoと連携して、ALS(筋委縮性側索硬化症)患者のコミュニケーションを支援するための研究開発を開始することを発表した。3社はALS進行による身体的な制約からの解放に加えて、スムーズな会話と、表現豊かに他者と交流できる世界の実現を目指すとしている。

ALSは主に筋肉の運動を支配する神経(運動ニューロン)が主に障害を受けることで、手足や舌の筋肉が徐々に瘦せて動かしづらくなる指定難病だ。脳の機能は衰えずに保たれるので、体を自由に動かせないが意識や考えははっきりとしている「閉じ込め症候群」へと進行する可能性がある。また、人工呼吸器をつけるための気管切開手術によって声を失う場合もある。

3社は今回の取り組みにおいて、介護者などALS患者がより豊かにコミュニケーションを取れるよう、非言語表現の拡張に取り組むのだという。まずは、NTTが持つ、生体情報を基にした運動能力転写技術をさらに発展させて、メタバース空間においてALS患者の意思でアバターを自由に操作できる技術の開発を進める。

この際には、体に生体情報を取得する筋電センサを装着して、自身の微細な筋活動によって得られる生体情報を操作情報に変換し、アバターの自由な操作を実現するという。豊かな表現の創造はDentsu Lab Tokyoが担当する。

  • 筋電センサを活用したアバター操作

    筋電センサを活用したアバター操作

加えて、リアル空間における自身の運動の再現にも取り組む予定だ。体に筋電気刺激を提示して筋肉を制御し、意図する運動を再現する技術を手掛けるようだ。

  • 筋電気刺激を活用した非言語コミュニケーション

    筋電気刺激を活用した非言語コミュニケーション