十倉経団連2期目がスタート「官民連携で分厚い中間層の形成を」

少子化問題に強い危機感

「新たな副会長6名を迎え、総勢20名の副会長とともに、『成長と分配の好循環』実現に全力で取り組む。この我々の挑戦は国民の皆さんのご理解、後押しがなければ達成できない」

 こう話すのは、経団連会長の十倉雅和氏。

 5月31日、経団連は定時総会を開き、十倉会長体制2期目がスタートした。

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 新体制では、日本生命保険会長の筒井義信氏、NTT会長の澤田純氏、三菱商事会長の垣内威彦氏、三菱重工業社長の泉澤清次氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ社長の亀澤宏規氏、そしてヴェオリア・ジャパン会長の野田由美子氏の6名が新たに副会長に就任。

 野田氏は女性としてはディー・エヌ・エー会長の南場智子氏に続いて2人目、外資系企業としては初めての副会長就任となった。「少しでも女性役員比率30%以上の達成に貢献したい。私の後に続く人たちに、少しでも勇気と希望を与えることができれば」と話した。

 十倉氏は会長就任以来、「成長と分配の好循環」の実現を訴えてきた。そのためには構造的な賃上げが不可欠だが、岸田文雄首相ら政府とも連携して、産業界への働きかけを進めてきた。その結果、今年の春闘における賃上げは3.91%と30年ぶりの高水準に。この流れを来年以降も持続させることが課題。

 また、十倉氏が強い危機感を見せるのが少子化。足元で日本の出生率は1.3台だが「2.0に戻しても、人口減に歯止めがかかるのは30年後、40年後」と十倉氏。経団連がテーマに掲げる「分厚い中間層の形成」の実現に向けても喫緊の課題。

 この解決に向けては若い世代が結婚し、子供を生み育てられる環境整備が必要だが、この世代には日本の将来に対する不安感が強いとされる。そのためにも「全世代型社会保障」改革への取り組みも重要になる。

 失われた30年と言われ、物価上昇がしばらく続きそうな見通しの中で、企業の生産性向上や賃上げ上昇をいかに実現し、経済成長を図っていくか。経済人の責任と役割は重い。