ソニーGが熊本で土地を取得 半導体に約9千億円の巨額投資

既存工場やTSMCなど、九州が半導体の一大集積地に

「不透明な状況の中でも将来の準備を進めている」─。

 5月25日、ソニーグループ(以下、ソニーG・吉田憲一郎会長CEO=最高経営責任者)傘下の半導体事業会社・ソニーセミコンダクタソリューションズ社長の清水照士氏は、投資家向け説明会でこう強調した。熊本県合志市で約27万平方メートルの土地を取得する方針を表明。画像センサーの生産能力を増強するとみられる。投資額は数千億円に上る可能性がある。

 取得する土地は既存の熊本工場(熊本県菊陽町)や、台湾積体電路製造(TSMC)の子会社JASMが建設中の新工場にも近い。ソニーGはJASMに出資しており、同社から画像センサーに必要なロジック半導体を調達する見通し。ソニーGが合志市で新工場を稼働させれば、効率的なサプライチェーン(供給網)が九州に整うとも言える。

 ただ、清水氏は土地の取得時期や建屋の着工時期などの言及は避けた。「成長機会を確実に取り込みたい」考えだが、半導体市場の動向の予測が難しいことを踏まえ、投資のタイミングを慎重に見極める構えだ。

 ソニーGは、スマートフォンのカメラなどに使われるCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーの世界シェア(金額ベース)が22年度に51%で首位だが、足元のスマホ市場は停滞している。

 英調査会社オムディアによると、23年のスマホ出荷台数は前年比3%減の11億7000万台にとどまる見通し。同社は24年からは出荷台数が回復すると見ているものの、世界的なインフレ傾向に伴う消費者の買い控えも考えられ、回復の勢いが鈍化しても不思議ではない。

 それでも、ソニーGの投資意欲自体は引き続き旺盛だ。半導体分野では過去5年ですでに1兆円以上を投資。21―23年度には画像センサー関連で約9000億円の設備投資を行う計画で、24―26年度の3カ年でも同程度の投資を想定している。

 市況好転の兆しを捉えて適時に投資を決断するとともに、車載や産業機器向けなどで画像センサーの用途を開拓していけるか。ソニーGの目利き力があらためて問われる。

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