日経平均がバブル後最高値更新 海外勢の「買い越し」が牽引

一方、日本の機関投資家、個人は売りが続く

「ロシア・ウクライナ戦争は、現代において戦争状態が起こり得ることを世界に示した。これによって世界は、中国が台湾に武力侵攻する可能性を視野に入れ始めた」─。こう話すのは、ある金融系企業の首脳。

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 5月30日、日経平均株価の終値で3万1328円を付け、2日連続でバブル経済崩壊後の最高値を更新した。これは1990年7月以来の水準で、実に33年ぶりの高値。6月6日も3万2506円を付けるなど、高値更新が続く。

 この株価上昇を牽引したのは海外投資家の買い。3月31日の週から買い越しを続けている。なぜ、海外勢は買いを続けているのかを読み解くカギは冒頭の首脳の言葉にある。

 つまり、これまで海外勢はアジアの成長を買う時に、経済成長を続けてきた大市場・中国に投資資金を集中させてきた。

 だが、ロシアの行動は今でも領土を契機とする武力行使が起きる現実を突きつけた。そして中国は武力による台湾侵攻を否定していないという現実を前に、海外勢は「中国一辺倒でいいのか?」と疑問を抱いたのだ。

 その時にアジアを見渡すと、経済規模、市場規模、民主主義など、日本がナンバーワンではないか? という評価に。

 世界的投資家であるウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが大手総合商社株を買ったのは、その表れ。さらに直近も、株式だけでなく不動産への投資も視野に入れて、海外から資産運用会社などのトップが相次いで日本を訪れる。

 ただ、海外勢の買いの一方、日本の機関投資家や個人の売りが続いているのは懸念点。岸田政権は「資産所得倍増プラン」を打ち出し、NISA(少額投資非課税制度)も決めた。

 これまで日本の個人金融資産約2000兆円のうち、現預金が約1100兆円と、資金を眠らせてきた日本。だが、低金利で銀行預金がほぼつかない状況下、「30代、40代が自らの資金を投資に振り向け始めた」(証券業界関係者)という動きも出る。

 問題は、この株高の流れが持続するかどうか。米国、欧州の金融機関の危機は、まだ去ったと言える状況にはなく、予断を許さない。地政学リスクも高まる中、日本勢の「買い」が出てくるかが今後を左右する。