IDC Japanは6月1日、ESG(環境、社会、企業統治(ガバナンス))経営の取り組み実態調査の結果を発表した。これによると、国内企業の5割以上は実践的な取り組みにまで至っていないという。

同調査は同社が、ESGに関連または対応する自社システムの状況を把握する経営者や役員、管理職、システム担当者など、従業員規模が100人以上の国内企業510社を対象に実施したもの。

ESGで何らかの取り組み(一部の取り組み、複数の組織での取り組み、全社の取り組みの合計)を開始している割合は43.5%であり、5割以上は実践的な取り組みにまで至っていない。

また、ESGの取り組みを全く行っていない企業(20.4%、104社)に対して理由を尋ねたところ、「経営層のESGの関心の低さ」が49.0%で最多だった。

経営層の高度な意思決定が不可欠なESG経営の取り組みにおいて、この状況は国内企業にとって重要な事象として捉えるべきだと同社は考えている。

  • 勤務先のESG取り組み状況 出典: IDC Japan

ESG経営の実現にあたり今後1~2年の間で技術投資を行う必要性の高い領域を尋ねると、データ・プライバシー(11.2%)、従業員エンゲージメント評価(10.6%)、ESGデータ管理、収集と分析(10.2%)が上位3位だった。

このことは、国内企業がESG経営を取り組むにあたり、データのセキュリティや活用、取り組みに対する多様な評価と分析に関する技術領域に投資の重点を置いていることが示されていると同社は見る。

なお、ESG経営実現のための課題では、技術不足、予算不足、ESGに関する専門組織や能力の欠如が上位3位に挙がっており、国内企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組みの際の課題と重なる点も多いと同社は推察している。

  • ESGに関する取り組みで今後1~2年の間に技術投資を行う必要性の高い領域(複数回答) 出典: IDC Japan

ESGは投資家や規制当局、一般社会から期待が高まっているといい、経営層から従業員まで企業全体で取り組むべき課題になっていると同社は言う。 国内企業は、DXの取り組みを永続的に発展させるためのロードマップとしてESG 経営を捉えることができるとのこと。

同社Software & Services リサーチマネージャーの飯坂暢子氏は、「国内企業のITバイヤーは、関連するすべてのステークホルダーを再認識した上で、自社のマテリアリティに沿って目標の設定と測定を行えるテクノロジーの仕組みを構築し、ステークホルダーと議論を重ねながらESG経営を発展させ続けるべきである」と述べている。