富士通は5月24日、2023年度~2025年度までの3年間における新たな中期経営計画を明らかにした。2025年度時点の全社目標として、売上収益4兆2000億円、調整後営業利益5000億円、調整後営業利益率12%を掲げている。

代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏は「当社は2022年度までの3年間で新たなパーパス(企業の存在意義)を定め、事業や組織体制、人事制度、社内システムなどさまざまな変革を進めてきた。従業員のマインドや企業文化まで大きく変わってきており、今後3年間の新たな中期経営計画に沿って、さらなる変革を進めて結果を出す準備が整っていることを実感している」と述べていた。

また、同氏は今回発表した中期経営計画について、「2030年およびそれ以降の目指す姿の実現に向けて、持続的な成長と収益力向上に向けたモデルを構築するための期間」だとしている。事業モデルと事業ポートフォリオの変革に加えて、顧客企業のモダナイゼーションのサポートと海外ビジネスの収益性向上にも取り組むとのことだ。

  • 富士通 代表取締役社長 CEO 時田隆仁氏

    富士通 代表取締役社長 CEO 時田隆仁氏

富士通が今回新たにした中期経営計画では、2030年までに同社が目指す姿を実現して、社会、顧客、株主、社員など各ステークホルダーへ提供する価値を最大化するために、以下の4つの重点施策を定めている。以下、各施策について紹介する。

  • 新中期経営計画の位置付け

    新中期経営計画の位置付け

重点施策1:事業モデル・ポートフォリオ戦略

富士通は昨今の事業状況に合わせて、2023年度より事業セグメントを変更する。従来のテクノロジーソリューションを、新たにサービスソリューションとハードウェアソリューションに分ける。

ハードウェアソリューションはハードウェアの販売と保守サービスを手掛け、サービスソリューションでFujitsu Uvanceを中心とするグローバル横断のソリューションや、各リージョンに特化したサービスでビジネスを成長させる。成長が見込める領域への投資とその効果を明確にすることで、事業ポートフォリオの強化をマネジメントするための施策とのことだ。

  • 事業セグメントの一部を変革する

    事業セグメントの一部を変革する

同社ではサービスソリューションを「今後の成長をけん引する領域」と位置付けており、オンクラウドのデジタルサービスとオンプレミスのサービスを展開する。2025年度までに、サービスソリューション全体で売上約20%、調整後営業利益率約2倍の伸長を目標としている。

  • 事業成長の鍵はサービスソリューションの拡大だという

    事業成長の鍵はサービスソリューションの拡大だという

重点施策2:カスタマーサクセス戦略 / 地域戦略

富士通は顧客の課題解決を支援するために、コンサルティング事業の強化を図る。Fujitsu Uvanceのホリゾンタル領域を中心とするテクノロジー軸でのコンサルティングと、Fujitsu Uvanceのバーティカル領域を中心とするビジネス軸でのコンサルティングのどちらも手掛ける。2025年度までに、社員のリスキリングなどを通じてコンサルティングスキルを持つ人材を計1万人規模まで増やす予定だ。

また、モダナイゼーションサービスにおいては、同社のテクノロジー面とビジネス面の両面のコンサルティング能力を発揮するという。これまでメインフレームなど基幹システム構築で培ったエンジニアリング技術や、モダナイゼーション専任の組織、グローバルでのデリバリー体制など、同社が持つ強みを最大限に活用して顧客に最適なモダナイゼーションを提案する。

  • コンサルティングの拡充を図る

    コンサルティングの拡充を図る

地域別の取り組みにおいて、日本では全業種に向けてモダナイゼーションのサポートを展開するという。日本を起点にグローバルで事業を展開する企業に対しては、グローバル標準のサービスやサポートを提供するとのことだ。

一方、その他のリージョンにおいては、Fujitsu Uvanceを中心としたグローバルなソリューションやサービスを展開する。2025年度時点で、海外サービスにおけるFujitsu Uvanceの売り上げ比率は45%が目標だ。

  • 地域(リージョン)ごとに事業戦略を策定する

    地域(リージョン)ごとに事業戦略を策定する

重点施策3:テクノロジー戦略

テクノロジー戦略では、「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」「コンピューティング」「ネットワーク」「データ&セキュリティ」「コンバージング」をコアテクノロジーに定め、重点的に研究開発を進める。

AIを中心としてこれらのテクノロジーを強化し、サービスビジネスへの実装を通じて付加価値の提供を目指すとのことだ。

  • AIを中心に5領域に注力する

    AIを中心に5領域に注力する

重点施策4:リソース戦略

リソース戦略では、事業と連動した人材ポートフォリオの実現をグローバルで実施する。グローバルで統一した役職とその役割を定義して、人材のポートフォリオの可視化や人材育成計画を全社的に進める。また、リスキリングやアップスキリングを中心とした施策によって、成長領域のリソースを拡充する。

  • 事業と連動した人材ポートフォリオの形成を進める

    事業と連動した人材ポートフォリオの形成を進める

生産性の向上と経営基盤の強化にも引き続き尽力するという。人材とデジタルテクノロジーによって事業を支える経営基盤を高度化し、事業ポートフォリオに連動した人材ポートフォリオを形成して人的資本経営を推進するようだ。グローバルポスティングのような個人の成長に焦点をあてた仕組みや、自主性を重視した施策も展開する。

時田氏は「多くの企業が抱えているような課題を、当社でも同様に抱えている。当社の社内実践によって得られた知見やノウハウを新たな価値としてお客様に提供したい」と語り、人事戦略への意気込みを見せた。