Dell Technologiesは5月22日から4日間、米ラスベガスで年次カンファレンス「Dell Technologies World 2023」を開催している。初日の基調講演では、創業者兼CEOのMichael Dell氏、共同COOのChuck Whitten氏が登壇し、マルチクラウドを中心にDellの戦略について語った。アズ・ア・サービスブランド「APEX」については、「過去最大の発表」として複数の製品が発表された。

AIはPC、ネット、スマホに匹敵する革新 - Michael Dell氏

39年前、学生だったDell氏が起業したDellは、PCからサーバ、ストレージなどの法人向けに拡大し、EMC買収によりエンタープライズベンダーの座を確固たるものにした。テクノロジートレンドの変遷と共に製品戦略を変えてきたDellにおいて変わらないものは、技術で人々を力づけ、「ビジネス、生活、世界全体をよりよくする」ことだ。

「世界には常に大きなアイデアを持った人がおり、新しいビジネスチャンスが生まれる。それを可能にするパワーをわれわれは手にしている」とDell氏、「Dellはみなさんのアイディアを実現するために存在している」と続けた。

  • 基調講演を行う創業者兼CEOMichael Dell氏

2022年、Dellはサービスから1020億ドルを売り上げた。また、毎秒2台、1日に17万9000台を出荷しているという。

「Dellは世界で最も回復力のあるサプライチェーンを構築し、お客様のチャンスを実現するにあたって信頼できるパートナーになるための拡張性を備えている」と、Dell氏は胸を張る。

テクノロジー業界の目下のトレンドはAI、特に注目を集めているのは「ChatGPT」に代表されるジェネレーティブ(生成)AIだ。ジェネレーティブAIについてDell氏は、「PC、インターネット、スマートフォンと同じように産業、生活、仕事を変えるものになる」と位置付ける。

ジェネレーティブAIの爆発的な人気に対し牽制する向きもあるが、Dell氏は次のように語った。

「個人や企業をよりスマートにし、生産性を高める機会になる。一方で、モデルの限界もあるし、機密データはきちんと保護しなければならない。危険性に対して、責任を持って管理して、人間の価値を反映しているものである必要がある。しかし私は楽観主義であり、人類はその歴史において潜在的に存在するテクノロジーのリスクをうまく管理してきた」

そして、AIの真の機会は「AIが解き放つパワーを使って自社を再考すること」とDell氏。「組織全体でどうAIを活用するのかを考えていないのであれば、取り残されるだろう」と助言した。

顧客が進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)において、Dellが支援するのは技術だけではない。「専任のアカウントサービス担当者が6万5000人がおり、毎日顧客とやり取りしている。2万人以上のエンジニアが顧客が必要としている技術開発にあたっている」とDell氏はいう。

ビジネスが急速に変化し、ITも複雑になる時代、正解は1つではない。Dellはエッジからクラウドまでをそろえており、スマートな選択ができる、とDell氏は強みを表現した。

APEXは「最大の拡充」 - Project Alpineを実現

Dellはこの日、「APEXの最大の拡大」として、以下を含む発表を行った。

  1. 「Dell APEX Storage for Public Cloud」(「Dell APEX Block Storage for AWS」「Dell APEX Block Storage for Microsoft Azure」「Dell APEX File Storage for AWS」
  2. 「Dell APEX Cloud Platforms」(「Dell APEX Cloud Platforms for Microsoft Azure」「Dell APEX Cloud Platforms for VMware」「Dell APEX Cloud Platforms for Red Hat OpenShift」)
  3. 「Dell APEX Navigators」(「Dell APEX Navigator for Multicloud Storage」「Dell APEX Navigator for Kubernetes」)
  4. 「Dell APEX Compute」
  5. 「Dell APEX PCaaS」

Dellのマルチクラウドの特徴は、デフォルトではなく設計から組み込まれた「マルチクラウド・バイ・デザイン」だ。新製品を紹介した同社共同COOのChuck Whitten氏は、Dellの技術をクラウドで利用できるようにする“グラウンド・ツー・クラウド”、クラウドの体験をデータセンター、コロケーション、エッジ環境に拡張する“クラウド・ツー・グラウンド”、そして航空管制のような役割を担う管理と、三角形になぞらえて説明した。

  • デルが提唱する「マルチクラウド・バイ・デザイン」

  • 「マルチクラウド・バイ・デザイン」について説明する共同COOのChuck Whitten氏

「Dell APEX Storage for Public Cloud」は、Dellのストレージソフトウェア技術をクラウドに拡張する「Project Alpine」の実現となる。AWSおよびAzureのインフラコンポーネントを連携させて回復力、性能、拡張性のある分散型ストレージプラットフォームを構築する。

「Dell APEX Cloud Platforms」は、パブリッククラウドの運用環境をオンプレミスに拡張するもので、Microsoft、VMware、それにマルチクラウドのコンテナオーケストレーションとしてRed Hatと協業した。

中でも、「Dell APEX Cloud Platforms for VMware」は、「パブリッククラウドからオンプレミス環境にワークロードを動かしてスケールさせ、VMwareのスキルセットを活用してオペレーションを簡素化させることができる」とWhitten氏。

「Dell APEX Navigators」は、「APEX Console」を拡張し、マルチクラウドストレージとKubernetesを管理できるサービス。Whitten氏は「クラウド全体のオブザーバビリティが得られ、最適化ができる。インテリジェンスを組み込んでおり、適切なワークロードを適切な場所に配置できるので、パフォーマンスを最大化、コストを最小化できる」とメリットを説明し、「ゲームチェンジャーな製品」と評した。

「Dell APEX Compute」はAPEXをサーバー技術に拡大するもので、PowerEdgeを土台としたベアメタルコンピュートリソースを利用できる。APEX Consoleより設定でき、OSやハイパーバイザーなどは顧客が選択できる。

「Dell APEX PCaaS」は、APEXをPC、周辺機器などクライアントデバイスに拡大するもので、企業は最新のPCソリューションを柔軟に実装できる。

  • 「APEX」がカバーする製品ポートフォリオ