ソニーグループが4月28日に発表した2023年3月期連結決算(国際会計基準)は、売上高は前年度比16.3%増の11兆5398億円、営業利益は0.5%増の1兆2082億円だった。いずれも過去最高を更新。純利益は6.2%増の9371億円。音楽事業を筆頭に、モバイル機器向けのイメージセンサーなどを手掛ける半導体事業が利益を押し上げた。
同日の記者会見で、代表執行役社長 兼 CEOの十時裕樹氏は、「ヒットを継続して創出する力は着実に向上しており、音楽制作では、2022年度のSpotify周次グローバル楽曲ランキング上位100曲に平均して43曲がランクインし、前年度から大きくシェアを伸ばした。半導体事業に関しては、難易度の高い再化技術をしっかりと立ち上げ、2024年度以降に最終製品市場の回復が本格化した段階で、再度成長を加速できるような事業基盤を構築していく」と、説明した。
一方で、ゲーム事業や映画事業は大幅な減益となった。ゲーム事業の売上高は主に為替の影響やPS5ハードウェアの販売増により33%増の3兆6446億円だったが、ゲームソフトウェア開発費の増加や、ゲーム事業を手掛ける米Bungie等の買収に伴う費用の計上(527億円)といった要因により、営業利益は28%減の2500億円と大幅な減益となった。
しかし、家庭用ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」の流通在庫の正常化は進んでいる。2022年度通期での販売台数は1910万台となり、「ほぼ全世界でお客様を待たせることなくPS5をお届けできるようになっている」(十時氏)という。2023年度のPS5販売台数は歴代コンソール市場最多の2500万台を目指すとのこと。
また映画事業の売上高は、主に為替の影響により11%増の1兆3694億円となったが、モバイルゲーム事業を手掛けるGSN Gamesの事業譲渡に伴う利益の計上(700億円)により、営業利益は45%減の1193億円となった。
しかし、米国では3月以降、他のスタジオや大手動画配信業者による大型作品の公開が本格化しており、劇場興行の活性化が期待されるとしている。また、テレビ番組制作においては低予算作品へのニーズの高まりを受け、同社は2022年4月に買収した米Industrial Mediaを母体とし、ドキュメンタリーやリアリティショーなど各ジャンルに強みを持つ9つの制作会社を要するスタジオを立ち上げ、制作力を強化している。
「独立系スタジオとして長的なIP価値の最大化に取り組んできた結果、当分野は安定的に1000億円台の営業利益を創出できる事業構造となっている」(十時氏)
2024年3月期の連結業績の見通しに関しては、売上高は0.3%減の11兆5000億円、営業利益は3.2%減の1兆1700億円、純利益は10.4%減の8400億円を見込んでいる。
十時氏は、「2023年度は不安定な事業環境の中、足元のリスクマネジメントに重点を置き、中期の目標達成に向けた総仕上げを進める年度と位置づけている。事業を成長させ、優秀な人材を集め、企業価値を高め、社会に還元する、そうしたポジティブスパイラルをソニーグループの経営陣や世界中の社員とともに生み出していきたい」と語った。