今、さまざまな業界で熱い視線を浴びているChatGPT。多くの企業でその活用に向け、試行錯誤する姿が見られる。そんな中、パーソナルスタイリングサービス「DROBE」を提供するDROBEは3月29日、ChatGPTとAPI連携した新サービス「AIスタイリストさん」β版をリリースした。
OpenAIが2022年11月にChatGPTを公開してから約半年。DROBEはChatGPTにどんな可能性を感じたのか。なぜこれほど早くサービス化できたのか。そして、今後どのような展開を考えているのか。同社 執行役員 CTOの都筑友昭氏にお話を伺った。
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「何かできないか?」- それはAPI公開から始まった
――まずは今回リリースされたAIスタイリストさんについて教えてください。
都筑氏:このサービスはLINE上でユーザーから発信されるスタイリングのお悩みに対し、ChatGPTを活用したアドバイスを送ったり、DROBEの提案履歴を基にしたアイテムやコーディネートの提案をしたりするものです。「お花見に何を着ていけば良い?」といった自然言語での質問に回答し、お薦めのアイテムを提示、一部アイテムは弊社のECサイトで購入することができます。
――このサービスはChatGPTのリリースよりも前に、アイデアの構想があったのでしょうか。それとも、ChatGPTが登場したことで浮かんだものですか。
都筑氏:AIスタイリストさんは実は、今年3月に「OPENAI API(gpt-3.5-turbo-0301)」が一般公開されたことを機に構想を始めました。このAPIは従来モデルと同様の性能のものが約1/10のコストで提供されています。私の周りでもChatGPTがとても大きな話題になっており、これは“革命前夜”だという雰囲気を感じていましたので、今我々としても何かできないかという話が社内で自然発生的に出てきたのが、3月頭のことでした。
――ということは実際のリリースまで1か月弱!? このスピード感を生むためにどんな体制で進められたのですか。
都筑氏:エンジニア4名、デザイナー1名、プロダクトマネージャー1名にPR担当1名というワンチームで取り組みました。
――当初からPR担当もチームにジョインさせた意図は?
都筑氏:ChatGPTが大きく盛り上がっている状況を見ていて、この“お祭り”にちゃんと参加して、その舞台で踊って、プレゼンス(存在感)をきちんと出したいという思いがありました。ユーザーや世間に、新しい技術とファッションを組み合わせたものをどう届けるかが重要だと感じたので、PR担当にも初めから入ってもらったのです。
ECの課題を解決すべく、新たな商品の探し方を提案
――ユーザーからの自然言語での質問に回答し、お薦めのアイテムを提示するというアイデアはどのように生まれたのですか。
都筑氏:最初はChatGPTを使って何ができるのか手探りの状態で、完全な“技術ドリブン”の中でスタートしました。その中で、ECサイトが持つ漠然とした課題感を解決する提案をしたいと思うようになりました。それは、文脈を持った会話の中で商品の探索を一緒にやっていくUXをつくりたいというものです。
普段、ウェブサイトで商品を探す場合、例えば「お花見 ファッション」で検索をすると、ある一定の商品が表示されます。その上で「もう少しリーズナブルなものを」とか「もっとフェミニンなものを」という希望を反映するために、もう一度「お花見 ファッション リーズナブル フェミニン」といった検索ワードを入力し、また結果を見て、もう少し絞り込んでというプロセスがありますよね? ところが、ChatGPTを使うと、このプロセスが不要になり、店頭で店員さんと一緒におしゃべりをしながら商品を探索する体験に近いものを実現できます。そこに、ECサイトにおける新しい商品の探し方を提案できるのではないかという可能性を感じ、リリースのゴールに設定しました。
弊社が運営しているパーソナルスタイリングサービス「DROBE」も元々、ECサイトでの購買が苦手という方や、ファッションに対してお悩み、苦手意識がある方に解決策を提案したいという思いで始めたサービスです。ユーザーにとっては提案者が誰であるかよりも、自分のことを理解してくれている、自分に合うものを提案してくれる“コパイロット(副操縦士)”的な役割を果たしてくれる存在であることが重要です。そういう意味で、DROBEであれ、ChatGPTを活用したAIスタイリストさんであれ、根本的に提供したい価値は何ら変わっていません。