この数カ月間、米OpenAIが公開したAI(Artificial Intelligence:人工知能)チャットボット「ChatGPT」に関する話題が絶えない。小誌でも導入した企業の事例や、連載を通じて、その有用性や可能性、今後の課題について報じてきた。
このほど、ChatGPTをはじめとする「生成AI(Generative AI)」の最新の活用事例やトレンドについて識者が語るイベント、「Generative AI Business Day」がオンラインで開催された。本稿では、バックオフィス業務での生成AIの活用術について紹介しよう。
Anyflowの執行役員である松田光希氏は生成AIについて、「AI-OCRやSaaS連携など既存のツールで効率化してきたバックオフィス業務のラストワンマイルの手作業を助けるツール」だと語る。
経理や労務管理などのバックオフィス業務は、従来のサービスでも効率化・自動化できる場合が多く、すでに多くの組織ではその約50%を自動化できているという。生成AIの登場は、この割合をさらに高めてくれる出来事のようだ。
Amazonで備品を購入した場合を例にすると、商品名が長いなど領収書の記載は不要な情報が多く、会計ソフトに情報を入力する際に要約や手計算が必要となる場合が多い。これに対し、ChatGPTなどの生成AIに会計業務に必要な情報(商品名・販売主・金額など)のみを抜き出すよう指示することで、業務の効率化が見込める。
その他にも、顧問税理士や弁護士に対する日常の質問をChatGPTで改善するという「質問力アップ」にも応用できるようだ。この際は、バックオフィスを担当する従業員一人一人がプロンプトの書き方を勉強するのではなく、ChatGPTの使い方やプロンプトの書き方の見本を組織内に浸透させる。
松田氏は税理士や弁護士に最初から漠然とした質問を送るのではなく、専門的な回答を得るために必要な質問文章や前提条件の伝え方をChatGPTに支援してもらうことを勧めている。なお、すでに多くの指摘があるようにChatGPTの回答内容は正確性を担保できるものではないため、ChatGPTに直接専門的な質問をするのは控えるべきだろう。
同氏は組織としてAIバックオフィスを考える際に最も重要なポイントとして、「馬を水飲み場まで連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」を挙げた。つまり、社内の多くの人材は自分から積極的に生成AIを使おうとは思わず、生成AIを使うインセンティブは経営者側にしか無いことに注意すべきとのことだ。
「社員としては、生成AIを使いこなしたからといって給与が上がったり転職市場での評価が上がったりするのでなければ、進んで取り組むインセンティブにはならないはず。生成AIを使いこなすことによるメリットを一人一人にどう感じてもらうのかを、導入推進の担当者は考える必要がある」(松田氏)