東京理科大学(理科大)は4月18日、果物の皮に含まれる「低メトキシ化ペクチン」と、炭酸カルシウム(CaCO3)をベースとしたゲルにおいて、CO2供給源として炭酸水を利用することで、精密な圧力・温度制御を必要としない簡便なハイドロゲルの調製法の確立に成功したことを発表した。

  • 今回の研究の概要

    今回の研究の概要(出所:理科大Webサイト)

同成果は、理科大大学院 理学研究科化学専攻の手島涼太大学院生、同・大学 理学部第一部応用化学科の大澤重仁助教(現・東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 特任助教)、同・大塚英典教授、同・大学 薬学部薬学科の河野弥生客員准教授、同・花輪剛久教授、同・大学 先進工学部 マテリアル創成工学科の菊池明彦教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する化学と科学のインタフェースに関する全般を扱う学術誌「ACS Omega」に掲載された。

低メトキシ化ペクチン/CaCO3を原料としたハイドロゲルでは、ゲルの前駆体混合物のpHを変えることにより、最終生成物の架橋度や力学的強度を制御することが可能だ。特に、CaCO3の溶解度はpHが低いほど大きくなるので、酸性領域では高分子鎖へのCa2+の供給が容易になる。そのため、従来は酸性成分として水中で解離してグルコン酸を生じる「グルコノ-δ-ラクトン」(GDL)などの化合物がゲル化に使用されてきた。しかし、GDLでは最終生成物のpHが低いため、用途が限定されることが課題だったという。

その解決のため、CO2を代替材料として使用した材料調製が行われてきた。同手法では、CO2の温度と圧力が最終的なハイドロゲルの物理化学的特性を制御するための重要な因子となる。しかし、効率的に反応させるためにCO2は高圧下で使用する必要があり、調製操作が煩雑になることが課題だった。また、CO2がハイドロゲルの特性にどのような影響を及ぼすかについては未解明のままだったとする。

そこで研究チームは今回、これまでのハイドロゲル研究の知見を活かし、炭酸水を用いた低メトキシ化ペクチン/CaCO3ハイドロゲルの簡便な調製法の確立を目指したという。また炭酸水の有無が、ハイドロゲルの物理化学的性質にどのような影響を与えるのかを明らかにしたとする。

まず、低メトキシ化ペクチン/CaCO3の混合溶液に炭酸水を添加して調製したハイドロゲル「Pec-Ca-CW」と、添加せずに調製したハイドロゲル「Pec-Ca」が準備された。2つのハイドロゲルの水分量に違いはなかったが、Pec-Ca-CWはPec-Caよりもわずかに透明性が高く、ピンセットで持ち上げられるほどの強度を有することが確認された。そのため、炭酸水を添加することでハイドロゲルの構造が大きく変化することが示唆されたとする。