デジタル化とAIのトレンドがさまざまな産業に押し寄せており、われわれの仕事が変わりつつある。テクニカルなスキルを要する仕事が自動化されたり、機械に置き換わるトレンドは、今後も加速すると見ていいだろう。

人間中心のスキル

そのような中、人事専門家が重要になると予想するのが「人間中心のスキル」だ。人間中心のスキルとはどのようなものか。問題解決能力、創造力、クリティカルシンキング、非認知能力、共感力が該当し、人間が得意とするスキルともいえる。

確かに、機械は繰り返しやパターン化できることは、正確に高速にこなす。だが、ゼロから何かを生み出す創造性はない。情報を整理し、前提を疑いながら客観的に本質を捉えることはできない。

目標を持って自制心と意欲を持って取り組む、他者と協力しながら進めるといったことは、われわれ人間ならでは力だ。「このような人間中心のスキルをマスターすることは、今後さらに重要になる」と記事では言及している。

しかし、われわれが受けた教育システムは記憶力や知識にフォーカスしたものだ。標準テストを受けて学力が測定されるため、人間力や個性を測るのは難しい。

そのような教育システムにおいて、人間中心のスキルを養うことは難しく、若い人は積極的に人間ならではのスキルを構築する機会を求めるべきだという。

スキルを養うには?

人間のスキルを養うためには、振り返って内省したり、目的意識を学んだり、実践する必要がある。

自分が興味がある活動に参加して、他者と一緒に問題解決を図ったり、小さな目標を達成したり、あるいは異なる意見をまとめるなどの体験は、人間ならではのスキルを養ってくれそうだ。

企業が人間力がある人を採用するメリットはたくさんある。目的意識を持った従業員は社やチーム共通の目標に向けてコミットしたり、モチベーションを高めることができるだろう。これは、企業やチームのパフォーマンス改善につながるはずだ。

目標を持って動くことができる従業員はチームや社のロールモデルとなり、他の社員に良い影響を与えるだろう。

自分のウェルビーイングを重視しながらコラボレーションができる、インクルーシブな組織に近づくかもしれない。そうすれば、優秀な社員は残り、外部からも人を獲得しやすくなる。

ほんの数年で経済環境も技術も変化する不確実な時代だ。一方でキャリアを広げるチャンスと考えることもできる。

知識があるとか学歴だけでは図れないのが人間のスキル。目的意識と仕事を結びつけるという視点で仕事を探したり、自分が課題と感じていることにエネルギーを注ぐことができるかを考えてキャリアを探る時代が近づいているのかもしれない。

Financial Times紙が「Human skills will be vital for future jobs」という記事で専門家の声を交えて紹介している。