東京医科歯科大学(TMDU)は3月30日、2013年に厚生労働省が実施した国民生活基礎調査の二次解析から、労働者の日常生活のストレスと口腔の健康との間には明らかな関係があることを解明したと発表した。

同成果は、TMDU大学院 医歯学総合研究科 健康推進歯学分野の相田潤教授、同・青木仁大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、日本疫学会の公式オープンアクセスジャーナル「Journal of Epidemiology」に掲載された。

ストレスと口腔の健康の関連に関するこれまでの研究では、ストレスの測定項目の範囲が狭く、一貫した結果が報告されていなかったという。そこで今回の研究では、労働者の広範な日常生活のストレスと口腔の健康の関連を調査することを目的にしたとする。

今回の研究は、2013年に実施された国民生活基礎調査の、匿名化された27万4881名(平均年齢は47.0(SD=14.4)歳、男性15万2850名(55.6%)、女性12万2031名(44.4%))の個票データを分析することで行われた。日常生活のストレス、口腔の健康の問題(「歯が痛い」、「歯ぐきのはれ・出血」、「かみにくい」のいずれかの項目が1つ以上ある場合を問題ありとする)、および各共変量について、自記式質問票の情報から得られた。共変量には性別、年齢、配偶者の有無、職業分類、教育歴、喫煙習慣、飲酒習慣、健康のための活動、健診の受診、健康上の問題における日常生活の影響、歯科以外の治療中の主な疾患(15疾患)が用いられた。

  • ストレススコアと口腔の健康問題(性、年齢や生活習慣などが考慮されている)

    ストレススコアと口腔の健康問題(性、年齢や生活習慣などが考慮されている)(出所:TMDU Webサイト)

そして、多項ロジスティック回帰分析を用いて、日常生活のストレスと口腔の健康における問題との関連が推定された。それに加え、拡張逆確率重み付け法(AIPW法)が用いられ、口腔の健康における問題の有病率が推定された。

今回の対象者のうち、4.0%に口腔の健康の問題が認められたという。口腔の健康における問題の有病率は、ストレスのない人で2.1%だったが、ストレススコアとともに増加し、最大のストレススコア7点以上の人では15.4%に達したという。

  • ストレススコアと口腔の健康の問題などの分布

    ストレススコアと口腔の健康の問題などの分布(出所:TMDU Webサイト)

  • ストレススコアと口腔の健康の問題に関するロジスティック回帰分析の結果。多変量解析は、性別、年齢、配偶者の有無、職業分類、教育歴、喫煙習慣、飲酒習慣、健康のための活動、健診の受診、健康上の問題での日常生活の影響、治療中の疾患の影響が考慮された解析結果

    ストレススコアと口腔の健康の問題に関するロジスティック回帰分析の結果。多変量解析は、性別、年齢、配偶者の有無、職業分類、教育歴、喫煙習慣、飲酒習慣、健康のための活動、健診の受診、健康上の問題での日常生活の影響、治療中の疾患の影響が考慮された解析結果(出所:TMDU Webサイト)

ストレスのない人と比較した、ストレススコアが最大の人の調整オッズ比は、9.2倍だったとする。AIPW法で各共変量にて調整した口腔における健康の問題の推定有病率は、ストレスがない人が2.2%であり、最大のストレススコアの人で14.4%だった。個別の口腔の問題についても、ストレスが増えるほど症状を有する人が増えるという関係が見られたとする。労働者の日常生活のストレスと口腔の健康における問題との間には、明確な用量反応的な関係が認められたとした。

  • 個別の口腔の問題の推定有病率(%)。推定有病率は、AIPW法で性別、年齢、配偶者の有無、職業分類、教育歴、喫煙習慣、飲酒習慣、健康のための活動、健診の受診、健康上の問題での日常生活の影響、治療中の疾患の影響が考慮された推定結果

    個別の口腔の問題の推定有病率(%)。推定有病率は、AIPW法で性別、年齢、配偶者の有無、職業分類、教育歴、喫煙習慣、飲酒習慣、健康のための活動、健診の受診、健康上の問題での日常生活の影響、治療中の疾患の影響が考慮された推定結果(出所:TMDU Webサイト)

今回の研究の長所は、労働者の仕事以外の広範な日常生活のストレスを考慮したことだという。さらに分析の対象者が多数であり、日本全国を代表するサンプル分析とAIPW法により、ストレスと口腔の健康の間の用量反応的な関係を示すことを可能にしたとする。現在、ストレスに起因する口腔の健康における問題は、産業衛生の分野のみならず歯科分野でも十分に考慮されていないとする。根底にある機序を明らかにし、ストレス軽減を通じて、口腔の健康を向上するための介入プログラムを開発していくことが必要であると考えられるとした。