そこで今回の研究では、生きた生命ではなく、生命の痕跡へとターゲットの範囲を広げることにしたという。それならもっと小さな粒子でも問題なくなることから、その数もはるかに多くなり、母数が増えれば地球までやって来られる数も多くなるという。この場合の有望な粒子サイズは1μm程度と、微生物の死骸や化石が含まれうる大きさであり、またこのサイズになると、太陽の放射圧と重力の影響が同程度になるため、容易に惑星系を脱して星間空間に飛び出せるとのことだ。

そして今回の研究では、天の川銀河内の多数の恒星に付随する地球型惑星から粒子が脱出し、星間空間での移動や損失、そして最終的に地球に到達するまでのさまざまなプロセスを吟味し、そのような粒子の数を見積もった。そしてその結果、年間約10万個も地球に降り注いでいるという結果が導き出されたとする。

もし銀河系に存在する惑星の多くで生命が誕生し、地球のように表面が生命で満ち溢れた惑星が普通に存在するならば、これらの粒子の中に太陽系外微生物の化石や、生物に由来する岩石や鉱物(石灰岩が例として挙げられる)が含まれている可能性があるという。

そしてこのような粒子は、地球の大気圏に突入してもすぐに減速され、さほど高温にならずに地上に降ってくると考えられている。つまり太陽系外の生命の痕跡が刻まれた粒子が、日々、我々の頭上から近くの地面に落ちてきているかもしれないというのだ。もし、これらの粒子を集めることができれば、天の川銀河内に生命を宿す星がどれだけあるのかという問いに迫ることができる。

しかし研究チームによると、実際にはこうした粒子を捕らえるのは容易ではないという。というのも、太陽系の惑星間にも大量の「惑星間塵」が漂っているからで、それらは年間数万トンもの量が地球に降り注いでいるからだ。つまり、その中から特定の粒子を発見するのは、砂漠の中から針を見つけ出すようなものであり、選り分けは困難だとした。とはいえ、年間約10万個という個数は、将来的に太陽系外の生命痕跡の直接的なサンプルを得られるという、極めて貴重な可能性を示唆するとしている。

研究チームは、粒子の捕獲方法も複数考えられるとし、最も直接的な方法は、宇宙空間に検出器を多数並べて直接捕らえることだという。実際、星間空間を漂っていた星間塵の粒子が太陽系に入り込んできたと思われるものが、人工衛星で検出されている。それらの粒子の軌道を調べれば、太陽系外から来たかどうかを判別することも可能とした。また、地球に落ちてきた惑星間塵は、南極の氷や深海底に堆積した粘土からも検出されている。研究チームは、それらの中で太陽系外からの粒子を探し出せる可能性もあるかもしれないとした。