東京商工リサーチが3月14日に発表した調査結果によると、2022年4月~2023年2月における印刷業の倒産件数は59件で、前年同期と比べて31.1%増加した。印刷業の倒産件数は3年連続の対前年減少から増加に転じている。
印刷業の倒産件数は、2019年度から3年連続で前年度を下回り、2021年度は2003年度以降で最少の48件だった。倒産の減少が続いた背景には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大関連の資金繰り支援効果が大きかったが、印刷需要の回復が遅れる中で、支援効果も薄れた2022年度は倒産が増勢を強めているという。
2021年度の印刷業の休廃業・解散は2020年度と比べて16.3%減の260件で、2年連続で減少した。しかし2022年度は、4~12月の9か月間で前年同期比12.6%増の222件と増加に転じている。現在のペースで推移すると、2021年度を抜く可能性が高まっていると同社はみる。
印刷業界は構造的な不況が続き、そこにコロナ禍が追い打ちをかけた。業績回復がなかなか進まず、紙やインキなど資材高騰に加え、代表者の高齢化などの経営課題を抱え、倒産に加えて休廃業・解散も増勢局面に入っているとのこと。
財務省の法人企業統計調査によると、 2021年度の印刷・同関連業の売上高は7兆6652億円だった。印刷業界は出版不況に加え、ペーパーレス化やデジタル化に伴う需要減退もあり、2003年度の約4割まで市場が縮小している。
同社は、出版物や商業印刷の需要減退に歯止めはかからず、従業員の過剰感が増しているため、印刷技術向上やDX(デジタル・トランスフォーメーション)化など、他業態よりも早い構造転換が求められていると指摘する。
資本金別は、1000万円以上が46件で前年同期の1.6倍に増加したし、構成比は77.9%で前年同期から15.7ポイント上昇した。構成比が7割を超えるのは、2003年度以降の過去20年間で初めてという。一方、1000万円未満は前年同期比23.5%減の13件(、前年同期17件)だった。
倒産の原因を見ると、「販売不振(受注不振)」が45件(前年同期比25.0%増)で最も多く、構成比は76.2%(前年同期80.0%)と7割を超える。次いで、「既往のシワ寄せ」(赤字累積)が10件(前年同期比25.0%増)だった。
不況型倒産(既往のシワ寄せ、販売不振、売掛金等回収難)は55件(同25.0%増)で、構成比は93.2%(前年同期97.7%)を占めており、構造的な不況がうかがえるという。
倒産の形態別では、破産が42件(前年同期比27.2%増、構成比71.1%)で最多だった。また、特別清算が6件(前年同期比14.2%減)で、「滅型の倒産は計48件(同20.0%増)と、倒産の81.3%を占める。
一方、再建型の倒産は、民事再生法が3件(前年同期は0件)、会社更生法は2018年度同期から5年連続で発生しなかった。業績低迷から抜け出せず、消滅型を選択するケースが多くを占めたと同社はみる。
負債額別では、1000万円以上5000万円未満が前年同期比13.0%減の20件、5000万円以上1億円未満が同22.2%増の11件で、1億円未満が計31件(同3.1%減)だった。構成比は52.5%(前年同期71.1%)で半数を超えているものの、2003年以降の20年間で最低という。
一方、1億円以上が28件(前年同期比115.3%増、構成比47.4%)と前年同期の2.1倍に増加しており、負債額は膨らんでいる。
従業員数別では、10人未満が46件(前年同期比35.2%増)で、構成比は77.9%と前年同期から2.4ポイント上昇した。このうち、5人未満が29件(前年同期比7.4%増、構成比49.1%)、5人以上10人未満が17件(同142.8%増、同28.8%)だった。
10人以上は13件(同18.1%増、同11件)で前年同期を上回った。しかし、300人以上は2014年度同期から9年連続で発生しなかった。