オリンパスは3月13日、グローバル規模での人材戦略と人事制度の変革について語る記者向けのラウンドテーブルを開催した。本稿では、創立100周年を迎えた2019年に同社が打ち出した企業変革プラン「Transform Olympus」における、人事領域の現在地について紹介しよう。スピーカーを務めたのは、Human Resources Headの大月重人氏。
昨今は、感染症の流行や地政学的リスク、半導体不足、為替の変動など複雑な要因が絡み合い、世界の変化が加速し将来予測が困難となっている。そのため、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性の頭文字を取ったもの)の時代とも呼ばれている。
こうした中、オリンパスは変化の激しい環境でも強いリーダーシップを発揮できる人材の育成と、健全な組織運営による人材の定着率向上を狙い、人事戦略の変革に着手した。また、同社のパーパス(存在意義)である「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」をかなえるためにも、人材管理と同社の次世代を担う人材の育成が必要だったという。
同社はTransform Olympusの中で、戦略的な目標として「真のグローバルメドテックカンパニー」を標榜した。人材と組織を強化するとともに、質の高い人材ソリューションとサービスを通じて企業経営を前進させるべく、重点施策として3本柱を据えた。それは、「HR(Human Resources:人事)組織自体のグローバル化」「人事制度の真のグローバル化」「健やかな組織文化、働き方改革」の3つだ。以下に詳細を述べていく。
1本目の柱:HR組織自体のグローバル化
オリンパスが1つ目の柱として取り組んだのは、HR組織自体のグローバル化だ。これまではHR組織が北米、ヨーロッパ、中国などリージョンごとに独自のオペレーションが実施されていた。中には、50年以上独自の運用を行っている組織もあったという。リージョンごとのHR組織運営からグローバルHR組織に統一することで、ガバナンス強化も進めた。 さらには、グローバル規模でのHRビジネスパートナーとの協力や、人事領域に特化したCoE(Center of Excellence)の設置にも取り組んでいるとのことだ。
2本目の柱:人事制度の真のグローバル化
グローバル化したHR組織をもって取り組んだのが、2本目の柱である人事制度の真のグローバル化だ。全社員を対象に評価や報酬、スキル開発などのタレントマネジメントをグローバルで統一した。グローバル人材の最大戦力化と人材コストの適正管理を目指したとしている。
等級のグローバル標準化においては、世界約3万人の社員を同一基準でレベル格付けするそうだ。4月をめどに上位層約1000人をレベリングするという。すでに上位の約400人についてはグローバル規模で基本給や賞与、ストックオプションの比率などに関する算定方法を統一している。なお、報酬の水準はあくまで勤務地域の市場規模に応じるとのことだ。年内には全社員のレベリングを完了する予定。
同社が人事制度の変革で特に力を入れるのが、グローバルで活躍できる人材の育成プログラムだ。具体的な施策として、グローバルリーダーシップコンピテンシーモデルに沿って各コンピテンシーを強化できるプログラムの整備に取り組んでいる。
その他、一般従業員を対象としたビジネス基礎力の強化を狙う研修や、マーケティングなどのビジネスリテラシーの自律的な学習を支援するコンテンツの拡充などを実施する。同社は「社員の成長が会社の成長の原動力」だとしている。
特に日本での動きに着目すると、職務型人事制度の導入を強化する方針だ。従来型の年功序列による昇給・昇格や、日本独自の不明確な基準による評価を廃止し、世界で共通した等級制度と報酬体系に切り替える。年次や年齢ではなく職責に応じた等級体系とし、「年齢の概念は廃止」するそうだ。
3本目の柱:健やかな組織文化、働き方改革
3本目の柱は健やかな組織文化の情勢と働き方改革。人材のグローバル化や大退職時代に対応するため、社員のエンゲージメントを強化して誰もがベストなパフォーマンスを発揮できる組織作りに取り組む。
具体的には、「リーダーシップの改善」「コラボレーションの促進」「外部・顧客志向」という企業主体の取り組みと、「権限の委譲」「チャレンジできる風土」「ワークライフ・バランス」という従業員向けの取り組みの計6つの要素に挑戦するという。
例えば、ワークライフ・バランスを実現するために、会議を効率よく実施するとともに不要な会議を減らす方法やツールを導入するという。また、コラボレーションの促進に資する事例として、自社の組織に付いて理解を深めることを目的とした部門を超えた交流などを行うとのことだ。