ハイテク企業にレイオフの嵐が吹き荒れる中、大規模な人材削減を発表していないのがAppleだ。しかし、Apple(アップル)はこの1年未満で12人のエグゼクティブを失っているという。

Appleは2022年後半から幹部の退社が続いているという。その中には、インダストリアルデザイン担当バイスプレジデントのEvans Hankey氏、オンラインストア担当バイスプレジデントのAnna Matthiasson氏、ソフトウェアエンジニアリング担当バイスプレジデントのDavide Smoley氏、ハードウェアエンジニアリング担当バイスプレジデントのLaura Legros氏など、多数の重要な役職の幹部が含まれている。

Appleは経営層の異動が少ないことで知られており、これまで交代するのは1年に1~2人のペースだった。なお、これまでは幹部が退職すると、その役割を引き継ぐことができる幹部がいたが、Hankey氏のインダストリアルデザイン担当バイスプレジデントについては後任が見つかっておらず、最高執行責任者(COO)のJeff Williams氏に報告させているという。

3月12日付のBloombergが「最近の記憶では考えられないレベルの数の交代だ」と報道している。

Bloombergによると、ここ数カ月の退職者の大半が勤続年数15年以上のベテランであり、Hankey氏のような役職は、いつかシニアバイスプレジデントに昇格する可能性がある「キャリア最盛期」での退職としている。

原因の1つが、年齢のようだ。退任した12人のうち10人はほぼ同じ年齢。また、CEOのTim Cook(ティム・クック)氏および後継者と目されているWilliams氏は2歳しか変わらず、Appleの改革を支えてきた主力がキャリアの終わりに近づいているという。

これまでワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めてきたPhil Schiller氏はAppleフェローとなっている。さらに、管理職にのしかかる責任が増していることも要因にあると分析している。

なかでも、製品開発については官僚的であり、個人の力を発揮するのが難しいと同誌。Appleの社としての構造も指摘しており、機能別であるハードウェアエンジニアリング担当バイスプレジデントは「iPhone」「iPad」「Mac」などを部分的に受け持つことになることが負担になっていると示唆している。

加えて、報酬についても、同社の株価が2022年約30%下落したことも理由にあるかもしれないという。同社のバイスプレジデントは、給与の半分以上が株価になることもあるそうだ。このようなこともあり、Bloombergでは幹部の退社は今後も続くのではと予想している。