九州大学(九大)は3月8日、休眠することで抗がん剤抵抗性を示し、大腸がん再発の原因となる新たながん幹細胞を発見し、抗がん剤の投与と同時にその休眠中のがん幹細胞を除去することで、再発を強力に抑えられることがわかったと発表した。
同成果は、九大 生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授、同・比嘉綱己助教、同・岡毅寛研究員らの研究チームによるもの。詳細は、がんに関する全般を扱う学術誌「Cancer Research」に掲載された。
増殖能を持つ特殊な細胞が幹細胞であるのと同様に、がんの増殖や再発を引き起こすのが「がんの親玉」ともいわれるがん幹細胞だ。大腸がんもその例に漏れず、これまでの研究から「Lgr5遺伝子」を発現している細胞が、古典的ながん幹細胞として考えられてきた。ただその一方で、全がん細胞の2~3割を占めるほど多数存在するLgr5発現細胞の中には、さらに性質の異なる亜集団が含まれていることが予想されていた。しかし詳細な解析はこれまで行われていなかったという。
がん幹細胞が再発を起こすためには、何らかの方法で抗がん剤治療を耐え抜く必要がある(抗がん剤抵抗性)。抗がん剤抵抗性にはいくつかのメカニズムが知られているが、そのうちの1つとして、細胞増殖を停止して休眠状態に入ってしまうというものがある。従来の抗がん剤は、増殖の速い細胞を殺すことはできても、休眠状態の細胞にはほとんど効果がなかったのだ。
研究チームはこれまでの研究で、血液のがん幹細胞が、このような仕組みを利用して抗がん剤治療に抵抗性を示すことを発見していた。そこで今回は、大腸がんにも同様の性質を持ったがん幹細胞が存在するのではないかと考察し、調査に至ったという。