パナソニック コネクトは2月16日、同社が製造販売する、ロボットと溶接機を融合した溶接電源融合型ロボット「TAWERS:タワーズ(The Arc Welding Robot System)」の次世代コントローラー「G4コントローラー」を発売開始すると発表した。希望小売価格はオープン価格で、月間生産台数は2200台を予定している。
TAWERSは、溶接電源、送給装置、トーチ、ロボットが一体化しており、各種材質に応じた溶接工法をソフトウェア制御で実現する製品。今回、溶接性能をさらに向上させ、IoTソリューションへの対応力を強化するために、新型のコントローラーを開発した。
「溶接は社会のインフラ設備には欠かせない技術。しかし、溶接工程の現場は熟練者の勘・経験・根性頼りになっており、世界中で熟練者や後継者が不足している。ロボットを活用した溶接技術を広げていくためには、ソフトウェアの進化だけでなく、将来のシステム化を見据えたハードウェアも必要だ」と、プロセスオートメーション事業部 熱加工システム事業 事業統括の池谷啓司氏は語った。
まず、従来の製品に比べて、ロボットの最高速度が向上した。加減速制御の最適化により、6軸の最高速度を同社従来比で最大27%向上したという。特に、基本3軸の高速化によって空走タクトタイムを短縮することに成功。
また、溶接時に発生する金属の粒「スパッタ」の低減にも成功。同社独自のスパッタ抑制制御技術であるMTS制御(Metal Transfer Stabilization Control)の進化により、従来比で最大6割減となる低スパッタ性能を実現した。
従来のMTS制御では、アーク(2つの電極間で放電させることによって形成されたプラズマ)溶接中に溶融池が大きく振動し、微小短絡となってスパッタが飛散していた。新たなMTS制御では、波形制御を行いアーク力を強くすることで、アーク期間中に起きる微小短絡を減らし低スパッタを実現させている。
さらに、ハード面だけでなくソフト面もアップデートしている。オープンなインターフェース仕様である「OPC UA」および「OPC UA for Robotics」に対応した。OPC UAとは、産業用アプリケーションの相互運用を実現するオープンアクセスインターフェース仕様のこと。さまざまなメーカーが同じルールの下で通信を行うため通信先の制約がなく、つまり同仕様に対応しているメーカーならどんなメーカーでも通信できる。また通信がセキュアで、安全性の高いデータのやり取りも可能だ。
また産業用ロボット向けの業界標準規格であるOPC UA for Roboticsに対応したことで、業用ロボットに必要とされる標準的なデータについては特別な設定せずにデータ連携が可能になった。さらに、これまでの技術を継承しながら新たにIoT機能や外部機器(レーザセンサやカメラなど)との接続機能を強化したとしている。
そのほか、従来機同様の溶接条件テーブルを150種類以上搭載しており、今後も随時追加を予定している。加えて、溶接データ管理機能も強化し、TAWERSシリーズ初の10マイクロ秒周期で最大60秒間の電流電圧を記録できるようになった。
また、メンテナンス性も向上した。コントローラー部では、ラックの開閉なく、前面から部品にアクセス可能な構造にするとともに、1次側入力線、接続ケーブル類を背面に、ティーチペンダントケーブルを前面配線にして側面の突起を抑制。加えて、サーボ基板等のユニット化で省配線とメンテナンス性が向上した。
溶接電源部では、コントローラー接続部・フィルタなどを前面に、出力・治具端子類を一か所に集約させた。外部軸は、機能安全により各軸個別サーボON/OFFに標準対応させたとのこと。
同社は今後、国内仕様を皮切りに海外規格に対応した機種展開を予定しているとのことだ。