ロイヤリティ マーケティングは、共通ポイントサービス「Ponta」の運営とデータ、コンタクトポイントを活用したマーケティングサービスを展開する。「Ponta」の2022年末の会員数は1億1079万人で、提携店舗は26万店舗(2022年5月1日)、提携ブランドは143社、192ブランド(2023年1月1日)となっている。

主な提携先としては、au、ローソン、じゃらん(リクルート)、HOT PEPPERグルメ、ゲオ、JAL、コジマ、ビックカメラなどがある。

  • 「Ponta」とは(資料提供:ロイヤリティマーケティング)

「Ponta」のデータとしては、いつ、誰、どの店舗で、いくら利用したのかがわかるという。また、一部の店舗では、購入した商品もわかるという。

会員データとしては、登録時に取得した性別、姓名、生年月日、住所、既婚/未婚、職業などを保持している。

データは本人の同意を得て取得したものだ。

これらのデータを活用し、クライアントに対してターゲットマーケティングサービスを提供するが、同社の場合、自社で持つデータを外部に公開していないため、データ分析はロイヤリティ マーケティングの専門チームが実施しているケースがほとんどで、クライアントのニーズを聞きながら、ターゲットに沿った消費者の抽出およびマーケティング施策を提案する。

  • 「Ponta」のマーケティング活用(資料提供:ロイヤリティマーケティング)

ロイヤリティ マーケティング プロダクト統括グループ データイノベーション本部 本部長 小河貴裕氏

「Ponta」の特徴について、ロイヤリティ マーケティング プロダクト統括グループ データイノベーション本部 本部長 小河貴裕氏は、「通信キャリアや、オンラインサービスに寄り過ぎていないというが弊社の特徴だと思います。リアルの購買データもあり、業種も含めてバランスがいいと思います。加えて、Pontaというキャラクターが立っているというのも特徴で、SDGsの観点で、Green Pontaという取り組みにも会社として力を入れています」と説明する。

実際のマーケティング施策としては、Facebook、Instagram、LINE、Google(GDN)、ツイッター、Youtubeといったメガプラットフォームに対して、広告を出稿する。

これには、トレジャーデータの「Treasure Data CDP」を活用している。Treasure Data CDPは、APIを新たに開発することなく、メジャープラットフォームに容易に連携できるメリットを感じて採用したという。

YoutubeやGDN(Googleディスプレイ広告)には、データクリーンルームであるGoogle Ads Data Hubを活用し、分析しているという。データクリーンルームは、多くの1st PartyデータをもっているGoogle、Amazon、Facebook(メタ)、LINEなどのプラットフォーマーが、安心、安全な形で自社のデータを企業に開放するための環境。プラットフォーマーのクラウド上に構築される。

  • YoutubeやGDNではGoogle Ads Data Hubを活用(資料提供:ロイヤリティマーケティング)

「法人向けでは、外部のメディアとの連携の幅の広さと、Ponta IDと突合した会員数も多く、各メディアと深くつながっている部分が強みだと思います。取り組みの内容も高度で、データクリーンルーム専用環境も構築しており、Youtubeのどの広告を見た人が、どのお店で、どんな商品を購入しているかも分析可能な環境となっています」(小河氏)

メガプラットフォームの広告以外にも、自社サービスであるPontaメルマガ(会員数1912万人)やPontaアプリに対しても出稿する。また、Ponta DM会員も6100万人おり、これらの消費者に郵送でDMを送付できる。

「DMはオールドスタイルになりますが、需要もあり、6100万人という規模は国内にほかにないと思います」(小河氏)

  • 自社媒体への情報配信のほか、6100万人の会員にDMを配信できる(資料提供:ロイヤリティマーケティング)

同社のサービスを利用する企業について小河氏は、「飲料、食品、日用品といったメーカーおよび、リテール店舗に対する強みもありますが、金融、保険、不動産、自動車などに対してもライフスタイルやライフステージ(結婚、就職、出産育児、子供の進学など)などの情報を分析しており、幅広い業種にサービスを提供できていると思います」と、高額な商材や金融サービスにも利用できる点をアピールした。

ただ、この業界はドコモのdポイント、Zホールディングス(ソフトバンク)のPayPayといったキャリア系のほか、Tポイント、楽天ポイント、交通系サービスと競合も多い。そこで、今後の事業の拡大に向けた施策を聞くと小河氏は、「日本国内において、Pontaサービスは浸透しており、さらに会員数を増やしていくというよりも、すでに会員になっているみなさんに、より多くのPontaサービスを利用してもらう機会を増やしていきたいと思います。そのために提携先を増やすということもありますが、弊社自身が魅力のあるサービスを提供する、提携先においてPontaを選択する回数を増やすという施策もあると思います。利用促進に向けては、提携企業と協力しながら一緒に行うケースが多いと思います」と述べた。

鍵になるのは、タッチポイントを増やす点と消費者の行動に対する迅速なレスポンスだという。

「いろいろなタッチポイントという面では、SNSに限らず、オンライン・オフラインのさまざまな場面でメディアや生活シーンとの連携を拡大します。迅速なレスポンスでは、消費者が何かアクションを起こしたことに関して、クイックにレスポンスできようにしていきたいと思います。素早くレコメンドしたり、案内できるようなれば、より消費者から支持されると思います」(小河氏)

クイックレスポンス面では、同社は先月、日本郵政グループのJPメディアダイレクト(JPMD)と、Ponta会員の購買意向が高まった瞬間(=Moment)を捉えて、適切な情報を届けるDMサービス「ADMoment DM」の提供を開始した。

このサービスは、JPMDが有するDM印刷・発送プラットフォーム「DM Connect」を利用することで、Ponta会員が行動を起こしたタイミングから最短3営業日でDM発送するサービス。DM発送の起点となる「行動」は、会員のオンラインメディアや外部連携メディアへの接触、Ponta提携店舗の利用といった、デジタルおよびリアルの行動だという。

  • 「ADMoment DM」の特徴(資料提供:ロイヤリティマーケティング)

タッチポイントを増やす点では、電通との協業により、電通の提供する国内初IoT家電データを活用した統合マーケティングソリューション「domus optima」に、Pontaの購買データをIDごとに連携することを行っている。家の中での家電の利用データ(=イエナカデータ)と実店舗でのリアル購買データ(=イエソト購買データ)を掛け合わせることで、家の中でどのような生活をするユーザーが、家の外でどのような購買活動を行っているのか明らかにすることができ、これまで表に出ることのなかった生活者の無意識的な心理や行動など、インサイトを知ることができるという。

例えば、エアコンの冷房機能の利用状況がアイスクリームの購買関連することや、自動調理鍋の大きさとアルコール飲料の購買の関係もわかったという。

  • 自動調理鍋の容量とアルコール飲料の購買率(資料提供:ロイヤリティマーケティング)

最後に小河氏は、「Pontaの利用シーンを増やすことが、マーケティング精度やサービスの向上につながっていくと思います。その際は、レピュテーションリスクにもきちんと対応した上で、公正で透明性をもったデータ活用を利用者に示していくことが重要だと思います」と語った。