日本IBMは2月6日、オンラインでメディア向けにビジネスパートナーとの協業を強化するための新プログラム「IBM Partner Plus」の説明会を開催した。
これまでのIBMパートナービジネスの変遷
はじめに、日本IBM 専務執行役員 パートナー・アライアンス&デジタル・セールス事業本部長の三浦美穂氏は「IT業界はクラウドとAI、セキュリティの進化はもちろん、あらゆるものが急速に進化している。少子化に伴う労働力不足や為替、地政学、気候の影響など、ビジネスを運営するうえで不透明になってきている」との認識を示す。
こうした状況下において、同社ではハイブリッドクラウドとAIを大きな柱とし、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援し、オープンなテクノロジーでパートナーのソリューションに可搬性を持たせることに注力するとともに、技術提供によるパートナーとの協業を強化。2021年にはエコシステムの形成に10億ドルを投資すると発表している。
その中でテクノロジーの強化として、Red Hat Openshiftの活用とソフトウェアのコンテナ化を軸にしたオープンなテクノロジーの推進、パートナーのソリューションに同社の技術を組み込む、AI製品のライブラリ(Empeddable AI)に取り組んできた。
また、組織・人材面の強化では人材面では、パートナービジネス支援のための営業・エンジニアの人員増強、コンテナ共創センター、パートナーソリューション共創センターを開設し、グローバルのエンジニアも含めた組込型ビジネス開発支援エンジニア部隊「Build Lab」を設立。
Sell、Build、Serviceの各領域における進捗状況としては、SellではIBMテクノロジーの再販を通じたパートナーの新規市場参入を加速させ、2022年はIBM Cloudが前年比2割増、うちPower Virtual Serverは3倍以上になり、ソフトウェア領域の新規顧客件数は400社以上に達した。
Buildは、IBMテクノロジーの組込によるパートナ商材の付加価値を増強しており、コンテナ共創コミュニティを通じたハイブリッドクラウドを推進し、コミュニティ登録者数は1124人、勉強会の参加人数は1270人、組込ソリューション数は107社となった。
ServiceではIBMテクノロジーの導入によるパートナーのサービス強化を進め、NECとローカル5Gを活用した保全ソリューションを開発し、CTCとはハイブリッドクラウド支援サービスのOneCUVICをグローバル展開。また、NTTデータとは運用高度化ソリューション「IBM Turbonomic」の共同PoC(概念実証)、IDaaS(Identity as a Service)に関する共同講演を行うなど、パートナー共創センターを通じた協業に取り組んだ。
ただ、一方で収益性、ルール・手続きの煩雑さ、技術支援不足、市場での認知度、情報アクセスが複雑といった課題もあり、今年1月にこうしたパートナーの声をもとに刷新した新たなパートナープログラムとして「IBM Partner Plus」を発表した。
同プログラムについて、三浦氏は「従来はIBM Partner Worldとして提供していたが、複雑になり分かりづらいため、一新してパートナーとの協業を進めていく」と力を込める。
新しいパートナープログラム「IBM Partner Plus」とは
具体的に新しいパートナープログラムは「取引容易性の強化」「簡素化と明確化」「技術共創の強化」「案件創出の貢献」の4つの観点から改善を図っている。
窓口を専用サイト「IBM Partner Portal」に一元化しており、契約書の簡素化とパートナーとの協業・共創の体制を強化したほか、シンプルな報奨金制度(全製品共通)、競争力がある明確な仕切価格、成長領域の案件や熟練度(バッジ取得状況)に応じて報奨金が増加する。なお、4月1日から一部運用を開始(報奨金制度含む)し、7月1日に本格運用の開始を予定している。
また、AIとハイブリッドクラウド技術の共創・協業・協働により拡販を強化していることに加え、パートナー商材の拡販プログラムを拡充するとともにパートナーのマーケティング活動にも素材提供や資金単などで貢献するという。
特に専用サイトのIBM Partner Portalは創出された案件の先行登録による安ケイン保護の見地獲得や、受領済み報奨金の確認、専門知識の習得と状況把握(企業・個人レベル)、マーケティング・拡販用無償情報の入手・活用を可能としており、パートナー個別のカスマイズ画面を備えている。
技術共創強化を目的に、レベルはSilver、Gold、Platinumを用意し、レベルアップで利用できる特典が拡大する。SellとSarviceのパートナーはSliverが技術認定保有者3人、Goldが同7人、年間売上額が100万ドル以上(パートナーのソリューションに組み込まれたIBM製品の売上)、Platinumが同14人、同1000万ドル以上。
一方、組込パートナーに関しては拡大したい意向もあることから、Silverが組込ソリューションが1件、GoldとPlatinumも組込ソリューションはSilverと同様だが、年間売上額がGoldが10万ドル以上、Platinumが100万ドル以上となる。
さらに、新プログラムの技術知見の提供と拡販支援施策として、パートナーの技術的な付加価値向上と提案力の強化に貢献する施策に注力。特に案件創出フェーズへの施策を強化し、パートナーレベルに合わせて技術支援の内容やプログラムなどの施策を利用可能にする考えだ。同氏は「技術支援の強化に最もフォーカスしている」と話す。
案件創出の貢献では「Demand Engine」と「Growth Program」の2つのマーケティングプログラムを準備。Demand Engineは、すぐに使えるデジタルアセット(メールのテンプレートやSNSの雛形など)を、すべてのパートナーに無料で提供。Growth Programは、成長加速に向けた共同マーケティング費用負担を増額し、売上対前年比がプラス成長しているPlatinumとGoldのパートナーに対して提供する。
三浦氏は最後に「従来からのテクノロジー強化と人材強化を進めた“パートナーファースト”にIBM Partner Plusを加えることで、パートナーとの共創をさらに加速していきたいと考えており、“共に創る未来へ”をスローガンにパートナーとビジネスを拡大していく」と述べていた。