NTTドコモは2月2日から2月28日まで、オンラインでイベント「docomo Open House'23を」を開催中だ。同イベントでは、NTTグループが開発を進めるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想をはじめ、次世代の技術を支えると期待できる研究開発の最新事例を展示している。

具体的には、富士通らと共同開発した回路規模を約10分の1に低減した5G基地局装置や、YKK APと開発を進めるエアロゲル素材を用いた“電波の窓”、神戸大学らと実証した5G通信と手術支援ロボットを用いた遠隔地からのサポートなどが展示されており、今回はオンライン開催に先駆けて会場の様子を取材してきたので、その一部を紹介したい。

  • docomo Open House'23会場

    docomo Open House'23会場

充電のストレスから解放される給電システム

「充電ケーブルが不要になる未来がくる」……そう感じさせる展示が、充電ストレスフリーデバイスだ。デバイス自体の省電力化に加えて、長距離ワイヤレス給電技術を組み合わせることで、ケーブルをつないで意図的に充電行動をしなくても、いつでもスマートフォンやスマートウォッチなどを使えるようになる仕組みだ。

NTTグループが開発を進めているIOWN構想の要素技術の一つに、「光電融合」がある。NTTの強みである光技術による伝送と、電子技術による処理を緊密に融合させ、低消費電力化を目指す技術だ。これにより、スマートフォンやタブレット、スマートウォッチなどのデバイスを少ない電力で動かせるようになる。

また、室内光発電も充電ストレスフリーな環境を支える。壁や卓上にパネルを設置して室内照明からエネルギーを得る仕掛けである。パネルにはモバイルバッテリーを接続可能で、コンビニエンスストアやオフィスなどで室内光エネルギーを循環できるようになる。将来的に長距離ワイヤレス給電の受電機をデバイスの中に組み込むことができれば、充電ケーブルの差込口すら不要になるだろう。

  • 天井に設置した長距離ワイヤレス給電システム

    天井に設置した長距離ワイヤレス給電システム

  • 壁掛け式の室内光発電パネル

    壁掛け式の室内光発電パネル

集団のウェルビーイング創出を促す技術「EASE」

環境構成技術「EASE」は、個人のウェルビーイングのみならず家族や職場など組織全体の調和を促し、個人の自律と集団の調和が利他的に共存している「ソーシャルウェルビーイング」な状態を醸成する。

EASEは「環境スキルコンシェルジュ」と「活動環境インテリジェンス」の2つの要素技術によって支えられている。環境スキルコンシェルジュは、ウェアラブルデバイスなどから収集した個人の活動データを分析して人々の心理状態や行動意図を推定する技術だ。

もう一方の活動環境インテリジェンスは、環境スキルコンシェルジュが収集した各個人のデータを組織ごとに束ねて分析し、集団として良い状態を作り出すための方策を提案する技術。企業のチームを例にすると、会議が良き詰まっている場合に休憩を促したり、特定の人物のみに業務が偏ってストレスを抱えている場合に他の社員からの支援を調整したりといった使い方が期待できるという。

研究はまだ始まった段階とのことで、現在は環境スキルコンシェルジュがウェアラブル端末のデータやチャットの文面に基づいて、個人の状態を「ネガティブ」または「ポジティブ」で判定できるような段階とのことだ。

  • ソーシャルウェルビーイングの概要

    ソーシャルウェルビーイングの概要

「対話」ではなく「共話」を生み出すコミュニケーションアプリ

オンライン雑談コミュニケーションシステムは、ドコモの5G通信とMEC(Multi-access Edge Computing)技術を活用して、「共話体験」を創出する。

仕事中のWebミーティングの場面を想像してほしい。従来のWebミーティングでは、話者が1人ずつ話したい文章を完結させてから次の人が話し始める「対話」の場面が多いのではないだろうか。

話をしていない間はマイクをミュートにし、自身が話始めたいときにミュートを解除する、といった経験は誰しも持つだろう。せっかく話をしていても、他の参加者がマイクをミュートにしていると反応が分かりづらく、不安になる。

  • 対話と共話の違い

    対話と共話の違い

このシステムは口の動きから発話の意図を先読みして、ミュートを自動で解除する機能を備えている。そのため、対面での会話に近いテンポの良い掛け合いが可能となる。口を閉じている時は自動でミュートされるため不要な音が入らないが、笑い声や相づちなどはマイクを通して相手に届く。

対面時のように多くの参加者の言葉が行き交う、雑談やブレインストーミングの場面で有効とのことだ。

  • オンライン雑談コミュニケーションアプリを搭載したスマートフォン

    オンライン雑談コミュニケーションアプリを搭載したスマートフォン、話し始めるとミュートが解除されて話者のアイコンの周囲が白く光る