2023年の年頭にあたり、さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏は年頭所感として、以下を発表した。
あけましておめでとうございます。
2022年はコロナ禍におけるサプライチェーンへの影響が続くとともに、全世界的な資源高や日本におけるドル高などの生活への不安も高まり、グローバル経済の不安定さがさらに増した年となりました。また、米国を中心とした IT 企業の減退に対する悲観的な予測もあり、IT 業界における雇用の安定や資本市場の冷え込みも顕著になってきています。
日本におけるIT業界については米国ほどの影響はありませんが、それは日本がまだまだIT分野において遅れているからこそです。いまだに日本は、海外と比較してクラウドへの移行が遅れているなど、IT分野における課題は山積しています。
デジタル庁の創設により、クラウドバイデフォルトの考えをベースにしたシステムの刷新が始まりました。しかし、まだまだ進めるべきことは多く、民間企業においては司令塔不足もあり、システムの刷新はなかなか進んでいません。また、社会全体がITリテラシーの低い人や古いパソコンでも利用できるようにと、低いほうに合わせる傾向があることも課題であると考えます。デジタル庁の「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」という標語を実現する為にも、デジタルを使えなくてもいいではなく、全国民がデジタルを活用できるようにするための努力が必要です。
当社では自社に留まらない、社員のITリテラシーを高めるための取り組みを実施していす。リーガロイヤルホテルなどを運営する株式会社ロイヤルホテルと、2021年7月より相互出向による人材交流を実施し、ロイヤルホテルの「CS(カスタマーサクセス)」と当社の「IT」を掛け合わせることで、日本のDXを推進する人材の創出を模索しております。また、自社においてはDXJourneyという、エンジニア以外の社員に向けたIT教育の機会提供を行っております。
今後さらに、当社内において教育分野の強化を行いたいと考えております。当社の社員には非常にたくさんのエンジニアが在籍しています。最前線のプログラマーとしてキャリアを蓄積していくのも、もちろん大歓迎ですが、これまでに蓄積したキャリアを次世代の人達に教えていく講師やコンサルタントというような職種もキャリアパスとして選択できるように動き出しております。
このように「人」を主軸に考えた上で、2022年3月期より、クラウドサービスの強化を実施してまいりました。クラウドサービス事業に対しての投資を積極的に行い、物理基盤サービス事業の縮小を断行した結果、2022年3月期は減収減益になりましたが、今期は増収増益となり、クラウドサービスへの転換が順調に進んでいます。転換が順調に進んでいるのも、社の方針をていねいに社員に説明を行い、社員が、「人」が、一体となり推進してくれた結果です。
2023年も引き続き「人」に着眼し、エンジニアをはじめとした採用を強化してまいります。一方で社外に目を向けると、当社のサービスを活用できるエンジニアの減少も課題に感じており、この課題を解決するために社外向けの教育プログラムの構築や強化を行いたいと考えております。これは、日本のクラウド化を強力に推進していくという意味でもあります。日本のクラウド事業者は海外のクラウド事業者に勝てないというご意見も多々うかがいますが、日本のクラウド事業者もきちんと存在感を示していくことが非常に重要です。そのためには先ほど述べた「人」への投資だけでなく、「技術」へも投資してまいります。
当社はテックカンパニーとして発展してきたということもあり、オープンソースへのコミットや、研究分野への貢献など、中長期で業界に寄与する研究開発での投資を続けていきたいと考えています。また、クラウドの利用料金が起因で「やりたいこと」を叶えられないという声も多く寄せられるようになりました。エンジニア不足が深刻化する中で、できるだけインフラエンジニアを抱えずにクラウドの利用を進めた結果、インフラコストの増大に悩む方が増えています。この課題もエンジニア支援とコスト最適化の両側面から、当社が貢献できることも多いと考えております。そして、当社のサービスを通じてお客さまの発展に寄与してまいります。
2023年は、「人」と「技術」に積極的に投資を行い、当社のさらなる成長へとつなげてまいります。本年もさくらインターネットをどうぞよろしくお願いいたします。