業務課題の解消にはさまざまな手法がある。データ分析やデータ活用もその1つだが、これまで人が担ってきた作業をどうデータにすれば良いのか。これに応えるのが、人の作業を可視化する「プロセスマイニング」だ。

11月10日、11日に開催された「TECH+ EXPO 2022 Winter for データ活用 戦略的な意思決定を導く」では、三井住友トラスト・ホールディングス 経営企画部 デジタル企画部長であり、Trust Base 取締役COOも務める平方壽人氏が登壇。「プロセスマイニング/データによる業務プロセス改革」と題し、Trust Baseが行ってきたDX関連の取り組みの中でも、プロセスマイニングを中心にそのメリットや具体例などを解説した。

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専門性に応じた業務を深掘りするDX戦略子会社

三井トラスト・ホールディングスは、信託銀行を中核とする、三井住友トラスト・グループの経営管理機能を担う金融持株会社だ。信託銀行同士の統合で誕生したユニークな存在であり、他の金融グループとは戦略や成長可能性において大きな違いがある。「銀行ビジネスと信託関連ビジネスの統合モデルを手掛けており、より多様かつディープなデータを有している点」「システムが異なる複数の企業が合併しているため業務プロセスが複雑化している点」「信託銀行として業務品質への強いこだわりを持っている点」などが特に大きな違いだと平方氏は言う。こうした背景から、同社では課題解決に向けてDXに注力してきた。

そんな三井トラスト・ホールディングスが2021年4月に、DX戦略子会社として設立したのがTrust Baseだ。Trust Baseでは「ビジネスデザイン/データサイエンス/デジタルテクノロジー/セキュリティインフラ/デジタルオペレーション」という5つのセンターを有し、それぞれ専門性に応じた業務を深掘りしている。その中でも、データドリブン経営の実現を牽引しているのがデータサイエンスチームだ。同チームでは、データ利活用のユースケース推進、先端領域R&D・外部連携、データ分析環境・基盤整備、人材育成などを手掛けている。具体的には、数値系分析/言語分析/BIツールなどを通じてビジネスの現場と会話し、データ駆動型の業務への転換を進めている。

  • データサイエンスチームの業務領域

データで人の作業を可視化できるプロセスマイニング

Trust Baseではこれまで、デジタルオペレーションセンターがRPAを用いた業務プロセスの効率化を推進していた。実際に40万時間分もの効率化を図ってきたが、その中で約400業務のフロー図が蓄積されており、これをデータ/数字で可視化できないかと考えたという。そこで生まれたのが、システムに残るログデータから業務を分析するプロセスマイニングの取り組みだ。プロセスマイニングのメリットは、データで人の作業を可視化できることにある。これにより、Trust Baseでは本格的に業務プロセス改革を進め始めた。

  • プロセスマイニングのイメージ図

分析対象の業務は、毎月の掛け金が積み立てられ、本人が運用する確定拠出年金(DC)の受付登録業務である。利用者は投資教育が受けられるほか、税制優遇などを受けられるが、提供側としては必要書類や手続きの多さが課題となっていた。

加えて近年では、企業型DCだけでなく個人型確定拠出年金である「iDeCo」も含めて、加入者数が大幅に増加。大量の登録業務が発生している状況に陥っていた。企業型DCの受付業務フローは、書類などに不備が発生した際の対応が非常に複雑で、多くの追加作業が発生してしまうのも難点だったと平方氏は付け加える。

  • 企業型DCの受付業務フロー