日本電信電話(NTT)と東京電機大学(電機大)は12月5日、無線通信エリア推定に必須となる電波伝搬シミュレーションを高速で実現可能な技術を開発したことを発表した。

同社は6G(第6世代移動通信システム)およびIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)時代を見据えた高品質な無線環境の実現に向けて、無線通信エリア推定技術の高度化を進めている。

通常の無線通信エリア推定は無線通信方式のパラメータおよび動作を考慮した電波伝搬シミュレーションにより実施されているが、今回開発した技術では、計算時間を従来技術の100万分の1以上に削減できるため、環境変化に対する無線通信エリアの変化を即時に推定できるようになるという。

今回開発した技術では、最短経路探索問題のような組み合わせ最適化問題を高速で処理可能なアニーリングマシンの手法を用いているという。電波伝搬シミュレーション手法として世界中で広く使われているレイトレース法のような電波の経路探索を伴う伝搬損失計算を最短経路探索問題と組み合わせることで、伝搬損失が最小となる経路を逐次探索する問題に帰着させた。

  • 伝搬損失最小経路の逐次探索問題への帰着

    伝搬損失最小経路の逐次探索問題への帰着

さらに、伝搬の基本現象である電波の散乱現象をアニーリングマシンで実行可能なQUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization:二次無制約二値最適化)形式で記述することに成功。伝搬損失の小さいものから順に伝搬経路を探索するための制約条件を定式化し、QUBO形式で記述する技術も確立している。

NTTによると、今回開発した技術により、電波の散乱回数を従来よりも大きく設定できるようになるため、これまでよりも低レベルの受信電力推定を実現可能となり、高精度な無線通信エリア推定が雑音レベルまで実現できることとなるという。これにより、基地局配置の一層の適正化とそれに付随する省電力化の実現も期待できるとしている。

  • 今回開発した技術のテスト結果

    今回開発した技術のテスト結果