ゲームの裏側にはクラウドがある

ゲームプレーヤーにとってはゲームの「プレー」が最大の関心事であって、そのゲームが実際にどうやって「運用」されているかは気にしていないかもしれない。しかしながら、ゲームは快適にプレーしてもらえるようにさまざまな工夫が行われている。クラウドサービスの利用はそうした「工夫」の一つだ。

ゲームのどこでクラウドが使われているかは、ケースバイケースであり、「ここ」と断言することはできない。例えば、移動時間や待ち時間、空き時間などにスマホゲームをする人も多いだろう。スマートフォンを買い替えてもこうしたゲームのデータは引き継げることが多い。その場合、データがクラウドに保存されているので、スマートフォンを買い替えたり乗り換えたりしても、アカウント情報さえ同じなら続きからゲームができる。これもゲームにクラウドが使われているケースの一つだ。

FPSやTPSといったオンラインシューティングゲームでも、クラウドは活用されている。オンラインシューティングゲームでは通信の遅延がそのままゲームの劣化につながる。敵を素早く発見して撃つといった動きはプレーヤーが遅延の少ない高速なネットワーク接続を持つことが条件となる。

AWSは「AWS Outposts」や「AWS Global Accelerator」を提供しており、これらを組み合わせることで世界中のプレーヤーが高速に接続することを可能にしている。実際に、これらサービスを使ってオンラインシューティングゲームが提供されている。

任天堂、スクウェア・エニックス、ディー・エヌ・エー、ガンホー、ゲームフリーク、ドリコム、Happy Elementsなど、さまざまな日本企業がゲーム開発・運用にAWSのサービスを活用している。クラウドサービスの活用なしには最近のゲームが提供する機能の実現は難しい。

ゲームの内容は国で違いがあれど、技術は共通

日本のゲームベンダーに限らず、AWSは世界中のゲームベンダーが活用しているサービスだ。AWSはゲームベンダーの事例を「Game Tech - 業界別クラウドソリューション | AWS」で紹介しており、世界中のさまざまなケースでゲームを支える機能としてAWSのサービスが使われていることがわかる。

AWSのグローバルゲームテックソリューション&ビジネス開発でジェネラルマネージャを務めるRob Schoeppe氏は、ゲームは国ごとに大きな違いがあると説明する。特に、ストーリーテリングに大きな違いがあるそうだ。ゲームの作り方も違えば、使われている言語も違う、はたまたコミュニケーションの方法も違っているという。

  • AWSグローバルゲームテックソリューション&ビジネス開発ジェネラルマネージャ Rob Schoeppe氏

    AWSグローバルゲームテックソリューション&ビジネス開発ジェネラルマネージャ Rob Schoeppe氏

しかし、そうした違いはあっても、それらを実現するために必要になる「技術」は共有していることがほとんどだという。AWSはゲームベンダーが必要とする共通のサービスをたくさん提供している。ゲームのストーリーテリングや作り方が異なることから必要となる機能もケースバイケースで異なるわけだが、AWSの提供する多種多様なサービスがそうした要望に応えている。

ここで、Rob Schoeppe氏は「Game is global!!」と現在のゲームを端的に表現する言葉を口にした。ストーリーテリングも使われる言語も独特で最初はローカルに向けて開発されるゲームであっても、ゲームはゲームであり、世界中の人達が楽しめるもの。最初はローカルでも最後は世界中で遊べるようになる。そして。それを手伝うのがAWSのサービスというわけだ。

大規模な3Dシミュレーションを実現する「AWS SimSpace Weaver」発表

そして、AWSは11月29日(米国時間)、AWS re:Invent 2022の基調講演において新しいサービス「AWS SimSpace Weaver」を発表した。

これは、シムシティのように大規模な空間シミュレーションを構築・実行・運用するためのフルマネージド型コンピューティングサービスだ。100万を超えるエンティティがリアルタイムに相互作用するシミュレーションを実行することができる。

基調講演では、同サービスを使って都市全体の交通パターン、特定の空間における人の動きやフロアレイアウトなどをモデル化し、その空間で没入型トレーニングを実施する例が紹介されていた。

Rob Schoeppe氏は同サービスの特徴として、ゲームを実行する新しいサービスになる点を挙げた。もちろん3Dモデルを構築して没入型トレーニングに使うことはできるだろうが、それはそのまま仮想空間をゲームプレーするのとなんら変わらない。

もしかすると、そう遠くない日にAWS SimSpace Weaverを利用したオンラインゲームが登場するかもしれない。発表直後ではこれ以上のことは話せないようだが、今後の展開が楽しみだ。