テラデータの日本法人である日本テラデータは11月25日、クレディセゾンが統合データ基盤としてテラデータのクラウド型アナリティクスプラットフォーム「Teradata Vantage on AWS(Amazon Web Services)」を活用して実施した、DX(デジタルトランスフォーメーション)施策「CSDX(クレディセゾン・デジタルトランスフォーメーション)」に関する記者説明会を実施した。
Teradata VantageCloudは大小さまざまな規模のデータ分析に対応するクラウドアナリティクスデータプラットフォームだ。部門別の分析や探索的な小中規模の分析から、24時間365日運用が必要なミッションクリティカルなデータ分析まで、さまざまな用途に活用できる。データのサイロ化解消と全社横断的なデータの活用を支援する。
クレディセゾンはCSDXの推進に向けた統合データ基盤としてTeradata Vantage on AWSを採用し、同社のクラウド上で稼働している。現在は4000人以上のユーザーが使用し、20以上のシステムと連携しているという。
これまで、クレディセゾンは百貨店をはじめとする実店舗での対面チャネルによって事業を拡大してきた。しかし、スマートフォンやインターネット環境の普及によって顧客の購買チャネルがデジタルシフトしたことから、同社が強みとしていた対面を中心としたペイメント事業の成長が鈍化していたという。
そのような課題に気付いた同社は、継続的な成長を遂げるためにデジタル化に注力したとのことだ。具体的には、約3年間のうちに、内部開発案件の開発コストを61.8%削減したほか、ソフトウェアの利活用によって業務時間を累計で73万時間削減した。さらに、SNS(Social Networking Service)の強化や、ネット会員またはアプリ会員の拡大に向けた取り組みなどに着手している。
クレディセゾンは中期経営計画の中で、「デジタル」を事業成長のためのキードライバーの1つに据えている。リアルを融合させたデジタル化の推進や、デジタル化によって得られたデータを活用して、CX(Customer Experience:顧客体験)とEX(Employee Experience:従業員体験)を変革する方針だ。
ここで、クレディセゾンのCTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)とCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)を兼務する小野和俊氏は「よくあるDXの罠なのだが、新しい技術やより高度な技術を使うことが目的になりがちである。当社では、CXにもEXにも寄与しないDXは総じて技術の乱用だとして戒めている」と紹介した。
また、小野氏はシステム開発における「バイモーダル戦略」についても触れていた。バイモーダル戦略とは、安定性を重視した大企業的ないわゆるウォーターフォール型の開発手法であるモード1と、スピードを重視したいわゆるアジャイル開発であるモード2の双方を協調する戦略である。
一見相反するこの2つのモードだが、どちらかが優れているのではなく、プロジェクトの性質や事業の成長段階に応じて使い分ける必要があるという。モード1は秩序や計画性に重きを置き、上流の設計に従ってトップダウンで開発を進めるため、失敗が許されない領域に適している。モード2は手を動かしながら臨機応変かつ柔軟に開発を進める手法で、時代の変化にも機敏に対応できる。
クレディセゾンは70年超の歴史を持ち、約3600万人のカード情報を有している。機微な情報を持つ同社は失敗が許されない業務も多く、どちらかというとモード1の要素が強い開発が求められる。一方で、近年のデジタル化の加速に伴って、顧客のスマホ体験の向上やフィンテックに対応するにはモード2のような俊敏性も要求されている。
モード1とモード2の双方が求められる中で、Teradata VantageCloudは、データ処理基盤として対応可能な業務の幅の広さが今回の導入につながったようだ。金融機関などでの多量のトランザクションを安定的に処理できるだけでなく、クラウド上で手軽に動かせる柔軟性も兼ね備えている点が導入の決め手になったという。
クレディセゾンは現在のところ、2024年までのCSDXの目標として、「デジタル人材1000人の創出」「クラウド活用率80%」「業務プロセスの完全デジタル化」「セゾン・データプラットフォーム構築」の4つの目標を掲げている。
クラウドを有効に活用しながらデータ分析基盤の構築を進める同社だが、申込情報や審査結果などのデータウェアハウスとしてTeradata VantageCloudを用いている。このデータウェアハウスに対してTableauやR言語などを用いてデータを分析し可視化したところ、これまでよりもスピーディーにデータを確認できるようになったという。
憶測に基づく情報ではなく、鮮度が高いデータをダッシュボード画面に反映しながら会話ができるようになったため、パートナー企業や顧客とのコミュニケーションが円滑に進められているそうだ。
日本テラデータの代表取締役社長を務める高橋倫二氏(編集部注:本来は「はしご高」)は「当社としてもお客様の幅広い要望に応えるために、潜在的にはモード1とモード2の双方に対応できるよう開発を進めてきたとは思っている。しかし、2つのモードをはっきりと区別して認識しているクレディセゾン様の話を聞いて非常に勉強になったので、今後はどちらにも対応できるよう、当社はこれからさらに進化しなければいけないだろう」と述べ、決意を新たにしていた様子だった。