アトラシアンは11月17日、今後の事業戦略に関するメディア向けのラウンドテーブルを開催した。

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2002年にソフトウェア開発ツールのJiraの提供を開始した同社は、2003年に共同作業のためのワークスペースツールであるConfluenceをリリース。その後、2015年の米Nasdaq上場やプロジェクト管理ツールを提供するTrelloの買収などを経て、今年で創業20周年を迎える。

  • 豪アトラシアンのこれまで

    豪アトラシアンのこれまで

豪州のいちスタートアップだった同社は、現在売上高が30億ドルを突破するまでに成長し製品のユーザー総数は約25万人となっている。

ラウンドテーブルに合わせて来日した豪アトラシアン CRO(最高収益責任者)のキャメロン・ディーチ氏は、「今後、数年で売上高100億ドル達成を目指したい。これまで当社は製品のプロバイダーだったが、プラットフォーム提供企業へと転換していく」と事業方針を語った。

  • 豪アトラシアン CRO キャメロン・ディーチ氏

    豪アトラシアン CRO キャメロン・ディーチ氏

売上高100億ドルの達成は容易なことではない。世界では景気後退が懸念されており、企業の投資意欲にも影響はおよびかねない。実際に海外のIT大手企業ではレイオフが相次いでいる。

だが、ディーチ氏は、「ユーザーあたりに課金するビジネスモデルの当社にとって、企業の人材減は一見すると収益チャンスの減少に思える。しかし、人材が減った分、組織はより生産性向上に取り組まねばならず、当社の製品ロイヤリティは高まると考える」と述べた。

プラットフォーム提供企業への第一歩として、ディーチ氏が発表した新ソリューションが「ATLASSIAN Together」だ。

同ソリューションは、Trello、Confluence、タスク管理ツールのJira Work Management、ID管理ツールのAtlassian Accessに加えて、2022年4月に発表したチームマネジメント向けの新製品「Atlas」をバンドル提供するものだ。2023年に製品版が一般公開される予定で、価格は1ユーザーあたり月額11ドルとなる。

  • 「Atlas」の画面イメージ

    「Atlas」の画面イメージ

Atlasはプロジェクト管理やチームメンバーの作業内容を集約し、一覧することができるディレクトリツールだ。チームメンバーが共同編集・閲覧可能な「ホームページ」を作成して、Google スライドやExcel、Figmaなどのサード・パーティ・ツールで作成したプレゼンテーション資料や表、デザイン案を載せることが可能だ。

同社はこれまで、「アジャイル&Devops」「ITSM(ITサービス管理)」「ワークマネジメント」の3分野に対するソリューションを提供してきている。

ソフトウェア開発関連の製品提供から事業を開始した同社だが、ソフトウェア開発チームも拡大しユースケースも増えてきている中で、今後は企業・ビジネスに関連するあらゆる領域の製品を新たに提供していく方針だという。

また同社はフライホイールモデルの下、潜在顧客がオンラインでサービスの発見から購入までを完結し、顧客の口コミによってユーザーの輪が広がる仕組みが構築できており、その点が強みとなる。他方で、既存アプリケーションとの連携やシステムのクラウド移行を伴う製品導入など、複雑なニーズを持つ顧客に対しては、700社以上のパートナーと連携可能な体制も構築している。

  • 豪アトラシアンのフライホイールモデル

    豪アトラシアンのフライホイールモデル

2013年に日本で事業を開始したアトラシアンだが、進出当初はグローバルの収益のうち1%程度しか日本でビジネスを拡大できなかったという。

しかし、Webサイトや製品の日本語対応を進め、マーケティングやカスタマーサクセスの日本専任チームを設けることで、他市場を上回る成長を日本で得られるようになったそうだ。

「ローカライゼーションを唯一行った国が日本だった。今後も日本の市場は成長し続けると考えている」とディーチ氏は期待を込めた。