日本電信電話(以下、NTT)は11月16日から18日まで、「NTT R&Dフォーラム2022」をオンラインで開催する。「Road to IOWN 2022」をテーマとする同イベントでは、2019年に提唱を開始したIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の具体的事例に加えて、さらにその先の未来を形作る最新の研究開発内容も展示される。

そして、同社はいよいよ2023年3月に「IOWN1.0」として商用サービスを開始予定だ。フォーラムの開催に先駆けて報道向けに内覧会が開催され、NTT代表取締役社長の島田明氏がIOWN構想の概要と2050年を見据えた今後のロードマップを語った。

  • NTT 代表取締役社長 島田明氏

    NTT 代表取締役社長 島田明氏

データドリブンな社会は今後ますます加速すると考えられるが、動画の高精細化やデータの三次元化、IoT機器の進化などにより、取り扱うデータ量も膨大となる。これに伴いデータセンターの消費電力も増加し、日本では2018年と比較して2030年には約6倍の電力を消費するようになると予測されている。世界規模では約13倍だ。

また、これからの発展が期待されるドローンや自動運転、交通制御、VR(Virtual Reality:仮想現実)・AR(Augmented Reality:拡張現実)などのサービスには、数10ミリ秒から数ミリ秒以下の低遅延なネットワークが不可欠となる。

こうした課題に対応するため、NTTが提唱している技術群がIOWN構想だ。2030年度をめどに電力効率100倍、伝送容量125倍、エンドエンド遅延200分の1という目標を掲げている。

  • IOWN構想の目標性能

    IOWN構想の目標性能

IOWN構想の低遅延と大容量化を支える要素技術の一つに、APN(All-Photonics Network)がある。NTTは2023年3月にIOWNサービスの第一弾、IOWN1.0としてAPNサービスを開始する。これは100ギガビット毎秒の専用線サービスで、ユーザーがエンド・ツー・エンドで光波長を占有できるようになる。

同サービスはNTT東日本およびNTT西日本が提供する。通信形態はPoint-to-Pointで、Point-to-Multipointへは今後拡大予定。また、開始時の提供単位は県内となっており、県をまたぐ提供は今後の拡大が待たれる。

IOWN1.0では、既存サービスと比較して200分の1の低遅延化を実現している。また、Ethernetサービスと比較して遅延の揺らぎが無く、遅延の可視化と調整が可能。光ファイバー1本あたりの通信容量は、2023年3月時点で既存サービスと比較して約1.2倍、2030年以降は125倍へと拡大する予定だ。

  • IOWN1.0のサービス提供内容

    IOWN1.0のサービス提供内容

APNの適用が見込める例の一つにデータセンター間接続がある。APNによって地域のデータセンター間やハイパースケーラのデータセンター間を接続することで、あたかも同一のデータセンターであるかのように使えるとのことだ。

現在NTTとデータセンター間接続に関する協業を検討しているアマゾンウェブサービスジャパンの長崎忠雄社長は、「APNの大容量かつ低遅延の光技術が将来的にAWSとコラボレーションすることにより、迅速なサービスの展開やさらなる品質の向上につながると期待している。また、IOWNの低消費電力化は全世界の課題でもあるカーボンニュートラル実現の糸口にもなるはず。今後のIOWNの進化に期待しつつ、NTTとのコラボレーションを加速していきたい」とビデオメッセージを送った。

  • アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表執行役員社長 長崎忠雄氏

    アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表執行役員社長 長崎忠雄氏

島田明社長は「IOWNの最大の特徴は電力効率の向上」だとして、その実現の鍵となる光電融合デバイスを紹介した。光電融合とは光回路と電子回路を融合して、デバイスを小型化しながら高速化や低消費電力化を図る技術。ネットワークだけではなくコンピューティングにまで適用することで電力削減に寄与するという。

NTTは、2023年度にネットワーク向けの小型・低電力デバイスを商用化する。2025年にはボードとボード間、およびボードと外部インタフェース間を光で接続可能なボード接続用デバイスを商用化する見込みだ。2029年をめどにボード内のチップ間を光電融合技術によって接続し、さらに2030年度以降にはチップの内部も光で接続する。

2025年度以降、IOWN2.0として光電融合デバイスをAPNサービスだけでなくサーバにも適用する。2026年にはボード接続用デバイスを搭載した低消費電力サーバを商用化する予定だ。

  • 光電融合デバイスの開発ロードマップ

    光電融合デバイスの開発ロードマップ

島田明社長は「NTTは2025年に開催される大阪・関西万博において、バーチャル万博『空飛ぶ夢洲(ゆめしま)』プラットフォームの提供やパビリオンの出展を実施する。万博では、IOWN2.0の商用化サービスについても発表するので楽しみにしていてほしい」と語った。

  • 「NTT R&Dフォーラム2022」会場

    「NTT R&Dフォーラム2022」会場