ミライト・ワンは11月11日、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の中間決算および、新会社設立後の経営戦略に関する記者発表会をハイブリッドで開催した。

同社はミライト・ホールディングス、ミライト、ミライト・テクノロジーズの3社統合によって設立した企業だ。グループ内のシステムインテグレーション部門を統合した新会社ミライト・ワン・システムズなど6社を子会社に置き、2022年7月よりミライト・ワン グループとして新たな事業体制をスタートさせた。

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ICTやNTT関連など強みの事業が大幅減収

2023年度の第1~第2四半期累計(上期)は前年同期比で101億円の減益となった。売上高は2020億円(同比4.6%減)、営業利益は9億円(同比91.8%減)で着地した。また受注高も2404億円(同比3.7%減)でとどまった。

  • ミライト・ワンの上半期の売上高の推移(2023年3月期)

    ミライト・ワンの上半期の売上高の推移(2023年3月期)

売上減の要因としては、同社が展開する4事業のうち、「ICTソリューション事業」「NTT事業」「マルチキャリア事業」が減収となった影響が大きい。

売上高はそれぞれ、ICTソリューション事業が532億円(同比128億円減)、NTT事業が532億円(同比128億円減)、マルチキャリア事業が532億円(同比128億円減)だった。一方で、2022年3月に買収した西武建設の事業が含まれる「環境・社会 イノベーション事業」は好調で、土木や建設、施設のリノベーション分野がけん引し、売上高は413億円(前年度比190億円の増加)となった。

ミライト・ワン 代表取締役社長の中山俊樹氏は、「ICTソリューション事業は、通信基地局向け機器の物販が一部キャリアの在庫調整などの影響を受け大きく減少した。また、2021年の東京五輪の会場の通信設備案件の反動減や、半導体不足による一部機材の納入の遅れによる工事全般の遅延なども影響した」と説明した。

  • ミライト・ワン 代表取締役社長 中山俊樹氏

    ミライト・ワン 代表取締役社長 中山俊樹氏

NTT関連事業(NTTドコモ関連の事業も含む)では、国が主導する高度無線環境整備事業の設備工事が2022年度に完工しており、その反動減が影響した。また、モバイル関連の事業では一部キャリアの投資抑制もあり、固定通信・移動体通信ともに減収となった。

マルチキャリア事業では、キャリアによる5G整備事業は総じて順調に完工が進み売上高は増加したものの、テレビ受信障害対策の工事が一巡した放送関係の事業で減収となった。

減益の背景として、中山氏はセールスミックスの変化と販管費の増加を挙げた。売上が減少した3つの事業は利益率が高く、環境・社会 イノベーション事業は相対的に利益率が低かったこともあり、利益を最大化できなかったという。

また、西武建設の買収によるのれん償却や退職金引当金の準備などノンキャッシュ部分に加え、統合に関連したブランディングや情報システムの整備などの費用も増加した。

「新グループの体制構築に向けて、上半期は社内向きの業務に多くのリソースを取られてしまったことが反省点となる。営業に使う時間、お客さまとの接点が減っていたのは事実だろう。第2四半期でようやく黒字に転換できたが、今年度300億円の営業利益達成はまだ遠い。強みのICTや通信関連の事業を伸ばし、経営の効率化を進めて、利益を着実に積み上げていく」と中山氏は語った。

  • ミライト・ワンの上半期の売上高の推移(2023年3月期)

    ミライト・ワンの上半期の営業利益の推移(2023年3月期)

下半期では、ICTソリューション事業において大型案件の受注が見込まれており、通信関連の案件も年度末の完工に向けて動いているという。同社は通期の業績予想は変更せず、受注高5400億円、完工高5400億円、営業利益300億円を目指す方針だ。

  • ミライト・ワン、通期の計画達成に向けた取り組み

    ミライト・ワン、通期の計画達成に向けた取り組み

3社の統合効果は40億円、管理部門統合で収益効率化を図る

上期の決算説明会の後半では、2030年に向けた事業ビジョン「MIRAIT ONE Group Vision 2030」の下で進める取り組みの進捗が紹介された。

ミライト・ワンでは、将来的に通信・建設関連の需要減を見越して、企画提案から運用保守までをカバーしマルチエンジニアリングサービスを提供する「フルバリュー型モデル」への転換を図っている。

その一環として、2022年7月からはリスキリングによる事業ドライブを目的に「みらいカレッジ」を開学。現在までにグループ会社、パートナー企業から1万3000名が参加し、建設技術やソフトウェア開発、マネジメント、ESG(環境・社会・ガバナンス)分野の研修や資格取得を目指している。

新たな成長分野として注力する「みらいドメイン」の、「街づくり・里づくり/企業DX・GX事業」では、札幌大通水族館の建設工事を受注し、複数の自治体から街づくり関連の案件相談を受けているという。

また、グローバル事業の拡張も進めており、双日と共同出資しているタワーシェアリング事業が下期に建設のフェーズに入る。

ミライト・ワン設立後の3社の統合効果について、同社は2022年度が約6億円、2026年までに総額40億円を見込む。

  • 3社統合による統合効果を約40億円と見込む

    3社統合による統合効果を約40億円と見込む

「管理部門・共通部門の業務統合で200名程度のスリム化ができると考える。雇用は継続し、人材を営業含めた戦略的な部門にシフトしていくことで収益の効率化を図りたい」(中山氏)

他方で、西武建設との事業連携効果も表れている。従来、外部に発注していた建設関連の案件を相互発注したことで、2022年3月から9月の間で約1億円の内部留保を創出できたという。

中山氏は、「西武建設の土木の強みとミライト・ワングループの通信の強みを融合し、『スマートゼネコン』コンセプトの下で新しい街づくりを支援していく」と述べた。