ソフトバンクグループ(SBG)が11月11日に発表した2023年度3月期第2四半期の連結決算(4~9月)は、最終損益が1291億円の赤字(前年同期は3636億円の黒字)だった。世界的な株式市場の不安定が続く中、AI(人工知能)関連の新興企業に投資するソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)事業は低迷しており、4兆3535億円の投資損失を計上した。さらに円安の影響として1兆954億円の損失を計上した。

同日開催された決算説明会で孫正義会長兼社長は、「新型コロナウイルス禍が収まりを見せない中、ロシアによるウクライナ侵攻などによる地政学リスクにより、世界中の株式市場が一気にやられてしまった。昨今の情勢によりほとんどの投資先企業が大ダメージを受けている。引き続き守りの姿勢を構える」と語った。

  • ソフトバンクグループ 取締役会長兼社長 孫正義氏

    ソフトバンクグループ 取締役会長兼社長 孫正義氏

一方で、第2四半期単体(7~9月)でみると、最終損益は3兆336億円の黒字と、前年同期の3979億円の赤字から改善した。最終黒字になるのは3四半期ぶりで、四半期としては過去最大の黒字幅となる。主たる要因となるのが、筆頭株主として保有するアリババ株の売却に伴う再評価利益だ。8月に発表した一連の取引で約5兆3700億円の利益を計上した。

また同社は、組織の効率化や投資の厳選など守りの姿勢を固めている。同社が最重要指標に位置付けている純資産価値(NAV)は3月末から減少したが16兆7000億円にとどめた。手元流動性は4兆3000億円あり、今後4年間の社債償還分を手元に置けている状況。さらに、保有株式に対する純有利子負債の割合を示す負債カバー率(LTV)は2022年9月末時点で、15%と低位を維持できている。

さらにSBGは大規模な自社株買いを継続しており株主還元を進めている。2021年11月に発表した1兆円の自社株買いを2022年10月17日に完了させ、追加で発表した4000億円についても11月10日に全額取得した。2016年から累計で5兆円もの自社株買いを行っている。

なお、今回の決算説明会で孫氏は冒頭のあいさつのみで、CFO(最高財務責任者)の後藤芳光氏が中心となり決算のプレゼンテーションなどを行った。孫氏は「私は守りより攻めの経営が向いている。今後はArmの成長を達成することだけに没頭する」と説明し、今後、決算説明会には姿を見せない意向を示した。株主総会などは従来通り出席する方針だ。

  • 孫氏は今後、決算説明会に登壇しない

    孫氏は今後、決算説明会に登壇しない

決算説明会における主役のバトンを託された後藤氏は、「当社で一番尖っているのは彼(孫氏)。攻め続けることで結果的にステークホルダーへの貢献につながるはずだ」と語っていた。

  • ソフトバンクグループ  取締役執行役員 CFO 後藤芳光氏

    ソフトバンクグループ 取締役執行役員 CFO 後藤芳光氏