東日本電信電話(以下、NTT東日本)は6月28日、6月17日付で同社の代表取締役社長 社長執行役員に澁谷直樹氏が就任したとして記者会見を開催した。

  • NTT東日本の代表取締役社長 社長執行役員に就任した澁谷直樹氏

    NTT東日本の代表取締役社長 社長執行役員に就任した澁谷直樹氏

澁谷氏は1985年に京都大学工学部を卒業し、日本電信電話(NTT)へ入社。2010年からNTT東日本の福島支店長を務め、東日本大震災からの復興に尽力した。その後、エヌ・ティ・ティ・ベトナム(現、NTTイーアジア)社長、NTT東日本副社長、NTT e-Sports社長などを歴任し、2020年6月にNTT副社長へ就任した。

記者会見の冒頭に同氏は、「効果的な経営により企業の成長を図るとともに、多様性に富んだ未来の社会づくりにも取り組み、両者を両立させる経営を実現する」と力強く切り出した。

同社は今回、新たな経営スタイルとして「地域の未来を支えるソーシャルイノベーション企業」を打ち出した。

  • NTT東日本の新たな経営スタイル

    NTT東日本の新たな経営スタイル

新たな経営スタイルにおける具体的な1点目の取り組みは、共感型のDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティングだ。従来型の答えありきでの課題解決を目的としたアプローチではなく、地域に飛び込み、地域住民の悩みに共感し共に考えながら試行錯誤して課題にアプローチする手法をとるという。

「地域密着企業であるNTT東日本ならではの経営スタイルを磨いていきたい」と澁谷氏は述べていた。

2点目の取り組みはフィールド実践型エンジニアリング力の強化だ。地域の価値創造のために必要な産業の育成や文化の継承、エコな街づくりなどに一元的に対応できるエンジニアリング力を醸成するとしている。

少子高齢化による人口減少が進む現代において、人や企業などを首都圏に集中する効率性を重視したモデルも我が国が取り得る選択肢の一つだ。これに対して、澁谷氏は地域の多様性と効率性を両立させる分散型のネットワークモデルを示した。

NTTグループが開発を進めるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想と、NTT東日本グループが開発を進めるREIWA(Regional Edge with Interconnected Wide-Area Network)プロジェクトを組み合わせて分散型の情報ネットワーク基盤を構築し、リモートワークが当たり前となる地産地消型の社会づくりに貢献するとしている。

  • NTT東日本が示す分散型ネットワーク社会

    NTT東日本が示す分散型ネットワーク社会

さらに、こうした分散型ネットワーク社会においてはデータ駆動型の効率的な社会の仕組みが必要となるとして、通信施設や設備やノウハウなど、同社が持つアセットを投入することを表明した。

  • NTT東日本のアセットを十分に活用するとのことだ

    NTT東日本のアセットを十分に活用するとのことだ

「当社はこれまでにも、中小企業向けの高付加価値なサービスや、システムインテグレーション、BPOの受託などを行ってきた。今後はこれらの事業を支えとして、ソーシャルイノベーション型のビジネスを伸ばしていきたい」と澁谷氏は述べていた。

NTT東日本がビジネスを展開する地域社会では、少子高齢化に伴う伝統産業の後継者不足やインフラの老朽化など多くの課題を抱えているのが現状だ。また、これらの課題を解決するだけではなく、持続可能な価値を創造可能なビジネスが各地で求められている。

そこで同社は、地域資産の価値を再発見するとともに、それらをデジタルの力でさらに拡張することで新たな雇用や新規の産業を生み出し、循環型の仕組みを地域に導入していくとのことだ。