奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)は10月10日、大腸菌などの微生物の薬剤に対する耐性や感受性について、細胞の電気的な特性を調べる「電気インピーダンス計測法」を用いて、高精度に素早く自動で測定・分析・判定できる装置として、「AI搭載型マイクロ流体デバイス」を開発したと発表した。
同成果は、NAIST 先端科学技術研究科 物質創成科学領域 生体プロセス工学研究室のヤリクン・ヤシャイラ准教授、同・細川陽一郎教授、同・大学 物質創成科学研究科 分子複合系科学研究室の上久保裕生教授、同・山崎洋一助教、同・大学 バイオサイエンス領域 分子医学細胞生物学研究室の末次志郎教授、豪州・マッコーリー大学のリ・ミン講師、中国科学院 深海科学技術研究所のヤン・ヤン教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は2本の論文にまとめられ、1本目は化学/バイオセンサーや化学アクチュエータなど全般を扱う学術誌「Sensors and Actuators B: Chemical」に、2本目は米国化学会が刊行するセンサに関連する分野全般を扱う学術誌「ACS Sensors」に掲載された。
病原性微生物による感染症に対する治療には、抗生物質の投与が有効であるため、対象となる微生物の感受性や耐性が、薬剤感受性試験を用いて調べられている。微生物の形態変化と薬剤応答の間には関連性があることから、電気インピーダンス計測法を用いた形態変化を調べる手法があるが、従来のシステムにはいくつかの課題があることから、その計測結果は、熟練の経験者によるデータ分析と判定が必要といされており、迅速かつ高効率に微生物の詳細情報を取得するのが困難だったという。
微生物の薬剤感受性試験をより正確・高効率に実行することは診断、創薬、治療法の開発や生命科学研究などの分野にとって重要とされることから、研究チームは今回、これまでの既存の微生物の電気インピーダンス計測手法の課題だった、データの校正方法や流路の構造について、AIを導入するなどの新たな手法も用いて解決し、薬剤耐性や感受性評価システムの高精度化および自動化を実現することにしたという。