東京大学(東大)は9月8日、北海道で産出する「砂白金」が40種を超える白金族鉱物の集合体であることを解明すると同時に、苫前町で採集された砂白金には新種の鉱物が含まれることを電子顕微鏡による化学組成分析と結晶構造解析によって突き止め、発見地にちなんで「苫前鉱(とままえこう、学名:Tomamaeite)」と命名したことを発表した。
同成果は、東大 物性研究所(物性研)の浜根大輔技術専門職員、アマチュア鉱物研究家の斎藤勝幸氏らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本鉱物科学会が刊行する欧文学術誌「Journal of Mineralogical and Petrological Sciences」に掲載された。
日本では、歴史的に明治中期の北海道において砂白金の産出が初めて確認されたが、しばらくは砂金に混じる不純物として廃棄されていたという。それが大正期に入ると、万年筆のペンポイントへの利用法が開発されたことから積極的に採掘されるようになった。
その後、戦時中には触媒の原料とするため、数十万人を使役した大規模な開発が行われ、北海道の砂白金はやみくもに消費され尽くしてしまったとされる。その結果、近代においては研究試料の入手が困難となってしまい、日本から産出する砂白金がどのような鉱物で構成されているのかなど、理解があまり進んでいなかったという。
しかし研究チームは今回、戦時中の乱獲を免れた砂白金鉱床が北海道北西部に残っていることに期待し、探索を行うことにしたとする
その結果、南北に70km、東西に30kmの範囲にまたがった調査において、計8か所から砂白金の採取に成功。その砂白金を用い、北海道の砂白金がどのような鉱物で構成されているのかについて、本格的な調査を始めることにしたという。
砂白金は、表面に加え、現代ならではの観察装置である走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、内部まで詳細に調査された。その結果、砂白金から40種を超える白金族鉱物が見出され、日本の砂白金は決して単純ではなく、実に多様な鉱物で構成される集合体であることが判明したという。