富士キメラ総研は9月7日、国内のIT投資動向を調査し、その結果を「業種別IT投資/デジタルソリューション市場 2022年版」にまとめた。
この調査では、製造業や金融業、小売/卸売業など9業種に分類し、業務システム系(業種特化型システムや業種共通で利用されるERPや財務会計、人事システムなど)や営業・マーケティング系、コラボレーション系(業種特化型のプロジェクトや情報連携に必要なシステム、業種共通で利用されるグループウェア、ビジネスチャットなど)、セキュリティなどカテゴリー別にIT投資の現状を捉え、将来を予想した。また、それぞれの業種に特化した注目の業種別ソリューションについても整理した。
国内のIT投資額は堅調な拡大が続くとみられ、2026年度には2021年度比21.7%増が予測されるという。
業種別では製造業、金融業、小売/卸売業の投資額が大きく、それぞれ業務システム系を中心に、セキュリティや営業・マーケティング系などへの投資が増えるとみられるという。
投資の目的としては、DXを活用したビジネスモデルの変革や事業領域の拡大などを目指すバリューアップ投資のウェイトが高まると予想され、企業の持続的な成長や不確実な情勢への柔軟な対応を目的とし、業種を問わず投資が増加するとみられるという。
特に金融業では、金融サービスの高度化や新しい金融ニーズへの迅速な対応、異業種参入による多様なサービス展開に伴い、APIやマイクロサービスなどの技術活用に向けた投資が進み、インフラ産業では、電力を中心にスマートメーターで収集したデータ活用などにより、脱炭素化や供給安定化など社会的な課題を解決するための取り組みへの投資が増えるとみられるという。
一方、ランザビジネス投資(現行ビジネスの維持・運営)は、既存システムのダウンサイジングやクラウド化により、保守/運用への投資は減少するとみられるが、人材不足への対応やコスト削減を目的に、既存業務における効率化やIT化への投資が増加し、今後投資額は縮小するものの一定の規模を維持するとみられるという。
業種別にみると、今後の伸びが最も大きいのは製造業で、生産現場でのデータ連携や可視化に向けたスマートファクトリー構築、全体最適化を目指した基幹系システムの刷新に対応した需要が中心になるという。
2021年度は大手企業を中心に収益が改善したことから、人材不足やコスト最適化、生産性の向上、スマートファクトリーの実現など、DX推進に関連した投資が拡大したという。
また、新型コロナウイルス感染症の流行により、サプライチェーンや需要状況の変動リスクが顕在化したため、データマネジメントや自動化、遠隔監視の実現へ向けた投資が加速したという。
投資カテゴリー別では、業務システム系への投資が5割以上を占め、基幹系システムの刷新やインボイス制度への対応や、部門/国内外拠点を横断した一元的な生産状況/情報管理ニーズの高まりに合わせ、MES(製造実行システム)やPLM(製品ライフサイクル管理)、SCADA(監視制御/データ取得システム)などの更新/新規導入が進んでいるという。
セキュリティは、スマートファクトリー化に伴い、サイバー攻撃対策としてOT(運用技術)/IoTセキュリティへの関心が高まり、ネットワークを通じたデジタルサプライチェーンに取り組む企業が増えているため、それに対応したセキュリティ対策への投資が増えているという。
コラボレーション系では、調達/購買業務におけるサプライチェーンの可視化や、見積依頼から評価/決済までの業務フローがシステム化できるSRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)の導入が進んでおり、営業・マーケティング系では、顧客の働き方の変化に合わせたアプローチ手法や、顧客接点強化のためオンライン展示会やWebセミナー、ECサイトなどデジタルマーケティングへの投資が増加するとみられるという。